2022年1月18日火曜日

受験の世界史B 研鑽ー36

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世界史Bの研鑽を再開したい。モンゴル帝国のことである。昔々教えた記憶があるが、実に久しぶりである。モンゴル帝国は、端的に言って絵しまうと、チンギス=ハンの子孫(黄金の一族:アルタン・ウルク)と、彼らに従属する武将(ノヤン)が、主に戦功に応じて各地に分与された領民と領地を支配する国(ウルス)が集まって形成された連合王国である。千戸(せんこ)制度(ミンガン)と呼ばれるトルコ系モンゴル系の騎馬軍団を基礎とし、皇帝によって分与された数十もの千戸軍団を管轄し、軍団や征服地域の租税や民生の管理は皇帝直属の財務官僚(ビチクチ)が担った。

即位したチンギス=ハンは、1204年トルコ系のナイマン、1211年、南の西夏、西遼に服属していた天山ウィグル王国、オイラト、トメト、カルルク、そして西遼を征服、南シベリア、中央アジアに勢力を伸ばした。さらに、金朝に遠征、東北地区と華北を席捲、1214年、金は首都を放棄して小国に転落した。1218年からは、中央アジアのオアシス農業地帯に遠征軍を送り、ホラズム・シャーを壊滅させた。1227年西夏を完全に滅ぼす直前に陣中でチンギス=ハンは病没する。

チンギス=ハンの息子は4人。長男ジュチ、その息子パトゥが、1241年のワールシュタットの戦いでドイツ・ポーランド軍を破り、キプチャク=ハン国を建国。次男チャガタイ、チャガタイハン国を建国。子のモエトゥゲンはバーミヤンで戦死。三男オゴタイは、チンギス=ハンの死後第2代皇帝になる。四男トゥルイは、次期皇帝を選ぶ監国となり、オゴタイを選んだ。長兄のジュチはすでに死んでいたが、兄弟は皆仲が良く父の遺志を汲んだようである。
1229年、即位したオゴタイはトゥルイと協力して、金朝との最終戦争に勝利した。トゥルイは遠征の帰路病没するが、次男チャガタイがオゴタイを強力に支持、皇帝の地位を固めた。1234年モンゴル高原中央部に首都カラコルムを建設。オゴタイの治世は様々な民族の書記官による文書行政が行われ、遊牧民には家畜100に対して1、農耕民には10の収穫に対し1が税となる十分の一税が帝国全土に適用された。また帝国内主要幹線路には駅伝(ジャムチ)が置かれた。

1235年カラコルムでのクリルタイで、南宋とアジア北部キプチャク草原とその先のヨーロッパ遠征を決定。南宋遠征はオゴタイの息子クチュの死で失敗したが、ジュチの次男パトゥが前述のように、1241年ポーランド・神聖ローマ・テンプル騎士団・ドイツ騎士団・聖ヨハネ騎士団ら連合軍をワールシュタットの戦いで破る。チェコ東部、オーストリアまで群を進めるも、オゴタイの崩御でモンゴルへ帰還した。

1241年オゴタイの急死、翌年のチャガタイの病死の後、監国になったオゴタイの皇后ドレゲネが生前にオゴタイが指名した後継者シレムン(オゴタイの三男クチュの子)を無視し、自身の子であるグユクを擁立しようとして選出が遅れた。1246年クリルタイはグユクに決したが、グユクと仲の悪いバトウは出席をボイコット、一次分裂の危機になるが、皇帝グユクは即位2年で崩御(1248年)した。しかし、この間1243年のアナトリアでキョセ・ダグの戦いがあり、ルーム・セルジューク朝を打ち破り、アルメニア王国、グルジア王国などがモンゴル帰順、1250年代のフラグの西方遠征まで時間差はあるが、イラン高原もモンゴルの支配地域として組み込まれていった。

第3代皇帝グユクの死後、オゴタイ家・チャガタイ家vsジュチ家・トゥルイ家で抗争が起こる。1251年、トゥルイ家のモンケが即位。オゴタイ家・チャガタイ家の有力者を皇帝暗殺の嫌疑をかけ弾圧した。モンケは、ゴビ砂漠以南の漢地、ハンガイ山脈以西の中央アジア、アム川以西の西アジアの三大ブロックにわけて地方行政機関を再編した。また、同母弟のうち次弟のフビライを漢地軍団の総督、三弟のフラグを西アジア軍団の総督に任命、その方面の征服を委ねた。フビライは1253年雲南・大理遠征で大理国を征服、フラグは1256年、ニザール派(イスマイール派の分派)を、1258年にはバグダッドのアッバース朝を壊滅させた。
一方、皇帝モンケは南宋との決戦の為長江上流に侵入したが1259年苦戦し陣中で病死した。

第4代モンケの死を受け、帝国は皇帝が並立する。首都カラコルムにあって事実上監国となった末弟のアリクブケと、南宋遠征中のフビライである。この混乱期に、フラグは自立したイルハン朝を建国。南カフカスのジュチ・ウルス(ウルスは遊牧政権)と対立戦争になる。(ペルケ・フラグ戦争:ペルケはパトゥの弟)この西の戦争と東の皇帝並立(=モンゴル帝位継承戦争)は、一時期勢力を失っていた中央アジアのオゴタイ・ウルス、チャガタイ・ウルスが勢力を盛り返す絶好の機会となった。…つづく。

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