2020年6月26日金曜日

マウントラッシュモアの7月

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20042
サウスダコタ州ブラックヒルズにあるマウントラッシュモア。ワシントン、ジェファーソン、リンカーン、そしてセオドアルーズベルトの4人の大統領の顔が彫られた岩山だ。私は、以前行ったことがある。サウスダコタ州は、アメリカの田舎らしい田舎と言っていい。そもそもなにか観光名所になるものはないかと喧々諤々の議論が行われ、大統領の顔を彫ることになったと現地で手に入れた日本語のパンフレットに書かれてあった。3人の大統領はすぐ決まったのだが、残りを誰にするかで揉め、眼鏡をかけているセオドア・ルーズベルトが絵面がいいということになったと書かれてあった。後に、民主主義の神殿という謳い文句で、大観光地化され、岩山の麓にはアメリカ50州の旗がはためいている。

このマウントラッシュモアを、7月4日の独立記念日前後に、大統領閣下が訪れるそうだ。花火も打ち上げるらしい。ところが、地元のネイティブ・アメリカンの人々が反対している。このマウントラッシュモアは、そもそも彼らの土地であり、白人の大統領の顔が勝手に彫られたもので、差別の象徴であるというわけだ。たしかに、ワシントンは自分の農場で奴隷を使っていたことは明らかだし、バージニア王朝の一人、ジェファーソンも同様。リンカーンも奴隷解放令で有名だが、西部開発のための大陸横断鉄道計画を推し進めた。これはネイティブ・アメリカンにとっては侵略行為に等しい。セオドア・ルーズベルトは、棍棒外交で有名なわかりやすい帝国主義者である。(日本にとっては日露戦争の調停者だが…。)ネイティブ・アメリカンには、この4人の中で最も明らかな差別的政策をとっている。

まさに本田勝一の「殺される側の論理」と「殺す側の論理」のぶつかり合いの様な話である。マウントラッシュモアを作ったサウスダコタ人々の意図は、観光名所をつくって儲けようという単純なものだったと思うが、「殺される側の論理」から見れば白人による土地の搾取、居留地への強制移住という、南アのアパルトヘイトも真っ青、中国のチベット・ウィグル問題とも五十歩百歩の話である。

今、アメリカでは、BML(Black Lives Matter)の反黒人差別運動が続いている。この余波が全米、そして世界へと拡散している。このマウントラッシュモアの大統領閣下訪問反対運動も、その波動の延長線上にあると思われる。非常に難しい問題である。
私は、アメリカは平等な多民族国家だとは思っていない。あきらかなヒエラルヒーが存在すると思っている。WASPをトップに、プロテスタント系白人の中でもヒエラルヒーがある。昔読んだアメリカのキリスト教の本では、英国国教会徒が最もステイタスが高いらしい。その次にメソジストがあり、バブティストは低めだと言う。世代を積み重ねながら、バブティストからメソジスト、そして英国国教会に改宗し自らのステイタスを挙げていく人々もいるという。一方、白人の中でも、カトリックは下に見られることが多いらしい。民族的には、アイルランド人やイタリア人などである。ユダヤ人も微妙な存在である。
白人の下に、黄色人種、さらにヒスパニック、黒人、最後にネイティブ・アメリカンとなるようだ。ネイティブ・アメリカンは、居留地に押し込められている。ウラン鉱山が発見されたので、居留地変更などという措置も取られたらしい。この点で、他の民族より、さらに差部的な措置を受けている、最底辺だと私は感じている。

サウスダコタのネイティブ・アメリカンにとっては、彼らの主張を全米に知らしむる絶好の機会なのだろう。私は、アメリカという国は好きだが、善悪、正邪と様々な問題がカオス的に存在していることも事実である。さて、サウスダコタの独立記念日、どういう展開を見せるのだろうか?
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20042

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