2020年6月23日火曜日

「哲学と宗教全史」備忘録3

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「哲学と宗教全史」の書評を続けたい。
まずルネサンスとペストの関係性。ヨーロッパ全域の人口の三分の一が死滅したこの時期、「メメント・モリ(死を想え)」と「カルベ・ディエム(一日の花を摘め)」という両極端な死生観が生まれた。神にすがるか、神の手を離れるか、ギリシア・ローマの古典の復活と共にルネサンスの引き金ともなった。ボッカチオなどは当然後者であって、こういう視点は実に重要だと思う。

ベーコンとガリレオは同時代の人。ベーコンの死後生まれたロックとニュートンも同時代。そして、ロックの死後生まれたヒュームはアダム=スミスの友人(当然同時代。)とイギリス経験主義は、近代自然科学の発達と共に三代にわたって発展しているという視点も面白い。

デカルトは、スウェーデンのクリスティーナ女王(今日の画像参照)に、わざわざ軍艦で迎えられ、講義をしにいったのだが、厳寒期で早起きの女王への講義は彼の体に負担を与え、風邪をこじらせ肺炎で亡くなる。近代哲学の祖も、北欧の魅力的な女王には弱かったという冗談が残されているとか。

ヘーゲルがベルリンへ向かう馬上のナポレオンを見て「世界精神が馬上ゆたかにイエーナの町を出ていく」という感想を述べたという。ヘーゲルは、最初フランス革命を賛美していたが、ルイ16世の処刑、ロペス=ピエールの恐怖政治に幻滅したらしい。しかしナポレオンが登場し、自由・平等・友愛を旗印に、ナポレオン法典で市民の権利を明文化し。自ら皇帝になったことに自分の理想、すなわち自由を求める絶対精神による歴史観と重ね合わせていたようである。
このヘーゲルが最も敬愛していた哲学者がフィヒテで、ヘーゲルは彼の後を継いでベルリン大学教授になっている。「ドイツ国民に告ぐ」というナポレオンの影響で、プロイセンの崩壊の危機に演説をしたフィヒテと対照的ではある。

「ミネルヴァの梟(ふくろう)は迫りくる黄昏に飛び立つ」というヘーゲルの名文句もいい。フランス革命という黄昏を、彼の進歩史観=知恵の女神ミネルヴァの連れている梟=知恵の象徴が照らすという意味らしい。…つづく。

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