2012年10月30日火曜日

イスラエルのスーダン空爆

The Jewish Press.com
先日、妻が「イスラエル軍がチュニジアを攻撃したらしいで。NHKのニュースでやってた。」と報告してくれた。「チュニジアに攻撃?」なんか変だ。WEBで調べたら、スーダンだった。「チュニジアとちゃうやん。」と言うと「家事しながらやったから聞き逃した。」とのこと。だいぶ違うが…。(笑)スーダンならありうる。イスラム原理主義が強いので、ハマスがらみなのだろう。で、だいぶたってから今朝の毎日新聞に、英・サンデータイムスの報道だとして、デカデカと載っていた。(いつも毎日新聞の報道は遅い…と私は感じている。)

ハルツーム南部の軍需工場を24日未明イスラエル空軍のF15戦闘機が4機が1トン爆弾を搭載し、さらに4機が護衛役として紅海から、スーダンに侵入。万が一の墜落事故に備えヘリ2機が現場周辺で待機、スーダンの防空レーダーに対し妨害電波を出す電子戦のための空軍機が1機、紅海上には空中空輸機が1機という作戦体制だったという。

この軍需工場ではイランの弾道ミサイル・シャハブが製造され、ガザに密輸される予定で、ガザへの武器密輸阻止というのが建前だが、将来イランの核施設を空爆する予行演習を兼ねていたと西側軍事筋が明かしているらしい。確かにハルツームまでの直線距離とテヘランなどイラン中部の直線距離はほぼ等しい。もちろん、イスラエル軍は、この攻撃自体を認めていない。(当たり前である。)

この攻撃、爆発で2名が死亡したそうで、当然非難されてしかるべきだろうが、私は違う面からこの空爆を考えている。予行演習説に疑問を感じるのだ。もちろん、政治的にはイスラエルは成功したと思う。アメリカの大統領選挙にともなうイランへの制裁の”ぬるさ”に我慢できず、軍事パフォーマンスを行って見せた。”予行演習”というコトバで、イランはもちろんアメリカにも脅威を与えたことは間違いない。
しかし、実際のところ、イランの核施設を攻撃するとして紅海からアラビア半島を回って行くには、あまりに距離がありすぎる。空中給油が絶対的条件になる。いくら護衛機がいたとしても、全機が空中給油するのには大きな危険が伴う。スーダンの防空レーダーくらいなら妨害電波でどうにかなるかもしれないが、軍事国家イランではどうか全く未知数である。直線距離が同じくらいだから予行演習というのは、どうも納得できない。
私は、案外アメリカが禁輸を決めているF22をイスラエルが持っているような気がする。F22ならその点全く問題がない。ヨルダンだろうがシリアだろうか、イラクだろうが、レーダーにはゴルフボールくらいにしか見えない。直線距離で突撃となるだろう。実際イランを攻撃する気ならイスラエルはF22を使うだろうと思うのだ。F15・8機でこのような作戦を取ったと、手の内を明かすような愚をイスラエルが犯すとは思えない。イランを油断させる作戦かもしれないという推測も成り立つ。

一方、今日の毎日新聞の夕刊には、クラスター爆弾を大幅削減するとイスラエル軍高官がAP通信などに明かしたという報道が載っていた。そもそもイスラエル軍は06年のレバノン侵攻時に、400万発のクラスター爆弾を使用、イラク・コソボでの紛争と合わせて国際的な非難を浴びた。オスロ条約が締結されるきっかけにもなったわけだ。軍高官は、レバノンのヒズボラへの攻撃にクラスター爆弾を使用する空爆は有効ではない、情報活動に基づくピンポイント爆撃に力点を置く、すでに計画が準備されているということを示唆したという。

このスーダン空爆の報道と、それに続くクラスター爆弾削減の報道。イスラエル軍の恫喝ともとれるし、国際世論の反発をギリギリのところで回避しつつ、アメリカ大統領選もにらんでのパフォーマンスだと私は思うのである。

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