2012年10月10日水曜日

日本のできる知的国際協力

IMFと世銀の総会が開催されているからだろうか、今朝の日経に、大塚啓二郎政策研究大学院大学教授の『途上国支援 技術移転軸に』という論文が載っていた。大塚教授は、世銀の「世界開発報告2013」の中心メンバー8人のお一人である。今回の開発報告は、Jobs(仕事)がテーマらしい。この論文で、大塚教授が特に主張されているのは、東アジアの発展を分析した開発経済学の普遍性である。世銀では、世界中の地域にあった開発経済学が存在すると言う理論が主流らしい。

東アジア的な開発経済学とは、日本や台湾、韓国、中国などが歩んだ開発の道筋である。すなわち、工業の発展段階は、まず繊維工業などの労働集約的な工業から始め、次にその設備投資に関連する機械産業、その素材たる製鉄などの金属工業などを発展させ、教育水準の向上とと共にIT産業やサービス業へと発展するという『雁行形態』である。日本も、他の東アジア諸国も同様の開発形態をとり、発展してきた。

ところで現在、世界経済は重大な局面にあると、大塚教授は言われている。世界の工場である中国から他の国へ産業が移動しつつあるのだ。日本では、70年代に45%をピークにしてGDPにおける工業生産比が下降し、韓国も90年代に40%から同様に下降、中国もまもなく下降に転じる可能性が濃厚である。おそらく、他の途上国へとさらに産業移転が進むはずである。

そこで、大塚教授は、日本はこの産業移転を支援することに期待していると言われている。同時にこの東アジア的雁行形態の決定的重要性のデータを示していく必要性を説かれ、これこそが日本ができる最大級の知的国際協力であると結ばれているのである。

…私の学んだ開発経済学は、まさに大塚教授の言われる東アジアモデルの『雁行形態』である。これをアフリカにあてはめた開発経済学を学んできたわけだ。反対に、それ以外の開発経済学モデルがあることの方が不思議なくらいだ。ソ連や鄧小平以前の中国が重工業化から開発するという愚行を実践したため、開発は一向に進まなかった。アフリカでも、モーリシャスなどはまさにこの雁行形態の縫製業で発展した。この論文にもあったが、エチオピアではイタリアの技術移転で革靴加工が生産を伸ばしているという。

たしかに、日本の技術移転・マネジメントやマーケティングなどをどんどん進めるべきであろうと思う。それは、これからの日本の生き延びる道ともいえるがが、同時に途上国との共生の道でもある。

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