2022年8月28日日曜日

自由貿易のデメリットは何か?

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2年生の政経は経済分野に入る。先日プリントを用意していたのだが、まずはアダム・スミスからフリードマンまでの経済思想になる。その後、一気にリカードの比較生産費説に触れることにした。リカードは言うまでもなくイギリスの経済学者である。アダム・スミスとともに、当時世界の工場として君臨していた母国の国益のために、比較生産費説=要するに自由貿易をした方が生産性が向上するという証明をしたわけだ。

関税をなくし、自由貿易をすると互いに儲かる。比較優位の生産物に特化すべきだという主張は正しい。ただ、自国の工業化発展のためには、必ず保護貿易化が必要で、いつまでもイギリスだけを工業国にしておく訳にはいかない。保護貿易を訴えたドイツの経済学者のリストは不遇をかこったが、優秀な為政者であるナポレオンもビスマルクもそう考えた。

自由貿易の利点は、生産性だけではない。WWⅡの太平洋上で、ドイツの攻撃をなんとか凌いでいたチャーチルと参戦前のF・ルーズヴェルトが、戦後世界は自由貿易体制であるべきだと結論付けた。この辺のアングロサクソンの深い洞察には恐れ入る。各国が、貿易で繋がっていれば、自国も経済的被害を受けるが故に戦争を回避できるだろうという想定は正しい。(実際には、ウクライナ戦争など、この想定を上回る事態が起こっているのだけれど。)そういう意味で、IMFも世界銀行も、現在のWTOの存在意義はあるといってよい。

しかし、と私は思う。社会科学というのは、一定の方向からだけではなく、違う方向からの視点も必要だ。今回の授業では生徒にそれを問いたいと思う。すなわち、自由貿易のデメリットは何か?という問いである。

それは、西ヨーロッパ諸国が、イギリスに対抗して保護貿易を行った時期に自国の工業を育成したことである。これには、かなりの資本蓄積や技術蓄積と自由な賃金労働者の存在が不可欠である。しかるに、途上国にはそういう保護貿易の時間を与えることなく、自由貿易を強要した。特にIMFと世銀の責任は重い。IMFの短期、世銀の長期融資には、自由貿易体制の堅持姿勢が必要で、工業化を進めさせない、原料供給地という植民地的構造を護るという先進国の構造的暴力だといっていいだろう。運良く、海外資本の進出で工業化が進んだマレーシアをはじめASEAN諸国もある。しかし、私のフィールドであるサブサハラ=アフリカ諸国では、完全にその芽を摘まれてしまった。こういう話もしてみようかと思う。もしかしたら、開発経済学の道に進む生徒が生まれてくるかもしれない。

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