2022年8月18日木曜日

本田由紀氏の「教育社会学」

L君から先日贈呈された『古市くん、社会学を学び直しなさい!』(光文社新書)を読んでいる。社会学というのは、対象が広いし、その考察方法も様々である。この本は日本の著名な社会学者12人に社会学について改めて教えを乞う対談というカタチをとっている。著者の古市憲寿氏は、東大の博士課程に学ぶ院生だがTVで社会学者を名乗っているそうだ。(我が家にはTVがないので、どういう人物か私は知らない。笑)

今日は小論文指導があったので、通勤時間に教育社会学の本田由紀氏との対談を読んだ。本田氏は東大出身だが、教育への怒りを持っているそうだ。以下本田氏の意見の要約。

受験戦争や管理教育の本質は今も変わっていない、偏差値で輪切りにし、垂直の評価軸を設け、上からランキング化しながら、過度な受験戦争への反省から「人間力」や「コミュニケーション能力」といった新たな評価軸が設けられたが、人間の価値を他者と比較して相対化し、序列化する点では変わらない、学力という垂直軸の隣に、もう一つ名を変えた垂直軸が立てられたにすぎない。また、「非認知能力」(IQなど数値化できる認知能力以外の就学前に身につける人間力)の問題もますます重要である。ここには特に教育に対する経済格差が顕著に現れる。

また日本の教育自体が、企業に就職するための教育であること。仕事は、正規雇用による年功賃金のもとで、家族に給料を届ける役割を担い、家族は得た収入を、子供に高学歴や社会的地位を得させるための膨大な教育費へ投じる。そして教育は新規学卒一括採用の名のもと、若い労働力を仕事の世界へ送り出すことを担う。この循環(本田氏によると戦後日本型循環モデル)は、すでに回らなくなっているのだが、望ましい生き方に関する価値観や規範、発想はこの古いモデルに準拠してしまっている。そのために、循環モデルからこぼれ落ちて苦しむ人が増えている。

教育に対して意識の高い生徒なので、小論文指導の格好の教材となった。ちなみに生徒は著者の古市憲寿氏を知っていた。(笑)…いやあ、やられた。

0 件のコメント:

コメントを投稿