2022年8月13日土曜日

和辻哲郎の「間柄」

「今こそ知りたい日本の思想家25人」のエントリーを続ける。今日は和辻哲郎。和辻とくれば「風土」だが、日本の倫理学の父としての側面から、「間柄」を中心に整理しようかと思う。

和辻は、日本の良さを哲学し、それを世界に向けて開こうとした思想家で、倫理は西洋的な個人主義的人間観に基づくという考え方は誤謬だと言うのである。『倫理は人間の共同存在をそれとしてあらしめるところの秩序・道』という理解のもと、間柄という概念で日本の倫理観を説明する。『間柄とは、個人にして社会であること』、単純に言うと人間関係を指している。

個々の人間がいるから間柄が成立すると同時に、間柄があるからこそ個々の人間が成立しうるという二重の関係がある、人間は事実として他者の関係性の中で生きているゆえに、間柄が個人に先立つことによってお互いに助け合うのは当然のこととなる。だが、誰とでも助け合うわけではなく、そこには信頼が必要で、同じ共同体の仲間として信頼しあえるから助け合うのだというわけである。この信頼の根拠として和辻は時間の概念を持ち出す。つまり、過去の信頼があるからこそ、未来においても信頼できるわけで、人から信頼を得るためには実績が必要で、共同体の中で長い時間をかけて、共通の体験を経ることによってようやく育まれるものであるというわけだ。その共通体験が、モンスーン型の風土で培われたという話につながる。

では、風土の異なる成員同士は連帯できないのか?和辻は「旅行者の体験における弁証法」という概念で異文化体験を媒介とすることによって成立するとしている。1つの共同体から生まれた文化が、異国の共同体の文化とぶつかりあい、融合していく。また自らも影響を受け変化する、そんなあり方を和辻は「世界文化の構造連関の弁証法」と呼んでいる。今回の夏期講習、日本の思想のイントロダクションとしては、和辻哲郎が最適かもしれない。

追記:昨日訪れたMIHO MUSEUMについて、そのバックを詳細に調べてみた。なかなか不可解なバックがあるようで、建物の芸術性などは素晴らしいと思うが、少しばかり興ざめしてしまったのだった。

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