2025年11月27日木曜日

佐藤優 哲学入門 備忘録2

https://www.science-studio-channel.net/akiresu_to_kame_part1/
佐藤優氏の『哲学入門』(角川書店/2022年)の付箋をつけた箇所の備忘録エントリーの第2回目。第2章の古代哲学の世界からである。

古代ギリシアは、奴隷経済社会であり、物と心にゆとりのある自由民が高等遊民となって哲学の基盤を築くことになる。ここで佐藤氏は、夏目漱石の『それから』に登場する代助に「働くのもよいが、生活以上の働きでなくっちゃ名誉にならない。」「食うための職業は、誠実ににゃ出来にくい。」と言わせている場面がある。品性が下劣なのは、食うために働いているからだという考えは、まさにギリシアの自由民の考え方であると。文学はそういう人をモデルにして成り立つというわけである。(P34-39)

神学にとって重要な存在は、メインストリームでアリストテレス、その裏側でプラトン。加えて重要なのがネオ・プラトニズム(新プラトン主義)であるとしたうえで、「AI時代の今大事なのは自然哲学」というタイトルで、「アキレスと亀」の話が登場する。

(あるものはある、あらぬものはあらぬというアフォリズムで有名な)パルメニデスの弟子のヅェーノーン(=ゼノン)によって、「アキレスと亀」というパラドクスを想起した。アリストテレスに、「弁証法の発見者」と称されたこのパラドクスは、運動を否定するために、運動を仮定し、以下にして背理に陥るかということを示し、間接的にその前提となった運動を否定しようとしたものである。佐藤氏は、このパラドクスを論理で崩すのは意外に難しく、今だに完全に納得できるような解決はついていないとのこと。(P40-43)

…高校倫理における自然哲学の分水嶺は、この変化するものは本当にあるとは言えないとするパルメニデスと「万物は流転する」と説いたヘラクレイトスの対立をどう料理するかであったと私は教えている。これがエンペドクレスの四元説、さらにデモクリトスのアトム説へと発展していくのである。

さらに、近代の数学者・バートランド・ラッセルの「床屋のパラドックス」にも触れられている。これは、ある村の人間(男)を、床屋に行ってヒゲを剃ってもらう人間と、自分でヒゲを剃る人間に分けた場合、床屋はどちらに入るのかという問題。床屋は自分で剃っているともいえるし、床屋に剃ってもらっているとも言える自己言及問題となり、コンピュータは解決・判断できない。AI時代には重要な、一番の隘路(あいろ)であると言えると、佐藤氏は警鐘を鳴らしている。工学系の人も哲学の勉強をしていないと危ういという話である。(P44-45)

…私自身、本年度はAIを教材研究などで徐々に活用するようになったが、たしかに危ういと思えることもある。

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