2025年11月24日月曜日

ドイツ的キリスト者運動の事

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佐藤優氏の『哲学入門』もあと少しで一読、というところまできた。その中には、大きく取り上げたい話と、備忘録的に記しておきたいものもある。いずれ再読しながら書評を書きたいと思っている。
今回は、その備忘録的な内容の1つ。1930年代のナチスドイツ時代に、ルター派の一部が他のプロテスタント教会と統一し、「ドイツ的キリスト者」(Deutsche Chiristen)と呼ばれる運動を展開したことについて。

キリスト教を「非ユダヤ化」する試みで、イエスは当時パレスチナに駐屯していたローマ軍団兵の息子で、ユダヤ人ではなかったとした。イエスのユダヤ教に対する戦闘的な側面を強調し、旧約聖書のすべてを含むユダヤ人が書いた部分を却下、さらにカトリックを根絶し、プロテスタントの統一を図るといった具合。

なぜ今日この話題にしたかというと、期末試験後にホロコーストのパワーポイントを生徒に見せるつもりであるからだ。新たに、この話も挿入したいと思ったのだ。これまでわたしが作ったホロコーストのパワーポイントには、その背景として次のような言葉が出てくる。

「まず、ユダヤ人のシナゴーグや学校にひをつける。それから燃えないものはすべて埋めるか土をかぶせる。こうして石ころ1つ、燃えがら1つ、二度と目に触れないようにする。モーセは申命記13章に、邪教にふける全ての都市は火によって焼き尽くされるであろうと書いている。モーセが今も生きていたら、彼は率先してシナゴーグやユダヤ人の家に火をつけていただろう。」

…これは誰の言葉だろうか、と毎回生徒に問いかけてきた。正解を言った生徒は未だにいない。これは、マルティン・ルターの言なのである。申命記の邪教はオリエント社会の多神教だと見るのが正しいと思われるし、ルターが嫌悪しているのは、イエスを死刑にしたという各福音書の記述ならびに、ユダヤ共同体が社会になじまず独自の存在感を見せていたことが大きかったように推測できる。私は、ルターという人物をそんなに重要視していない。わりと教義的には曖昧な部分は曖昧で、当時の政治状況で持ち上げられた側面と、ドイツ農民戦争での掌返しといった面も感心できない理由の1つだ。

ともあれ、ルター派から、こういったナチスに迎合した宗派が存在した事実は、受験の世界史や倫理では登場しないわけである。もちろん、これに反対した「告白教会」などもあったことも付け加えておく。

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