2016年11月10日木曜日

大森実「ムッソリーニ」再読

大森実の人物現代史2「ムッソリーニ」を再読した。ムッソリーニについては、近現代史を教えていても、ついついスポットを当てることがない。もちろん触れるには触れるが、ナチスドイツの陰に隠れてしまう。

今回30年ぶりに、「ムッソリーニ」を再読して、なぜイタリアが枢軸国の中で最も早く負けたかということがよくわかった。そもそもイタリアには、石炭も鉄鉱石もない。ムッソリーニが食糧増産を進め、工業化を進めたとしても、ドイツやフランス、イギリスにはそういう基本的な部分で劣っているということ。それがまず重要な第一の視点である。
さらに、ファシズムとしてはヒトラーの先輩格に当たり、当初はイタリアの方が立場が上だったが、ドイツとは、オーストリアをめぐってでライバル関係にあったこと。これが第二の重要な視点。ドイツとしてはオーストリアはそもそも大ドイツ主義的な観点からは併合すべき国であった。一方、イタリアにとっては未回収のイタリアを再び取り戻すというナショナリズムの高揚があったのだ。
第三が、スペイン内戦である。同じファシズムの系譜にあるフランコへの支援に、ヒトラーは軍の新兵器の実験くらいの感覚で軽く支援するが、ムッソリーニは矩を踰えてしまう。この肩入れが、無理なエチオピア侵略とともに脆弱なイタリア経済に重くのしかかってしまうのだ。WWⅡの開始時には、もうすでにドイツとは大きな差がついていたわけだ。

結局のところ、ヒトラーの方がムッソリーニよりは、一枚も二枚も上だったということになる。それが、再読しての大局的な感想である。

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