2015年2月4日水曜日

「キャパ、その青春」を読んで

昨年、沢木耕太郎の「246」を読んでいて、沢木氏が翻訳した「キャパ。その青春」を無性に読みたくなった。アマゾンで注文して手に入れてからだいぶ経つ。最近やっと読み始めたのだが、ある箇所が気になってしかたがない。

ハンガリー・ブダペスト生まれのユダヤ人であるキャパは、当時バンディと呼ばれていた。(と、いうよりこれが本名であるが…。)第一次世界大戦後、混乱したブダペストではデモが頻発していた。以下、気になっている箇所を引用したい。

あるデモの最中に、群衆が切実ではあっても実現しそうもない要求を大声で叫んでいると、バンディは声を限りに「くず鉄」という文句を怒鳴り始めた。その叫び声は瞬く間に広がり、やがて誰もが「くず鉄!くず鉄!」と叫び始めたー。自分たちがそう叫んでいるのがわからないままに。

「試してみたのさ」とのちにバンディは友人たちに語った。「僕は彼らにどんなことでも叫ばせることができるということがわかったよ。」それは、政治的なスローガンを作ることに対する辛辣な批評であり、興奮した大衆が考えもなく反応するということについての説得力のある指摘ともなる、ひとつの「実験」となった。(文庫本:42P)

私は、こういうデモに参加した経験がない。だが、毎日のようにニュースで、こういう群衆の叫びが報道されている。。そのたびに、この箇所を思い出すのだ。おそらくは、スローガンは時間的経過とともに、アジテーターによって過激化し、暴徒化のきっかけとなっていくのだろうと推測するのだ。

おそろしく”シニカル”で危険な実験である。

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