2010年11月29日月曜日

「紛争の罠」シミュレーション

最底辺の10億人
♪煙も見えず雲もなく、風も起らず波立たず、鏡の如き黄海は…今大変である。今日のアフリカ開発経済学の授業はそんな話から始まった。今日から、3時間の予定(期末考査までの持ち時間である)で、ポール・コリアーの『最底辺の10億人』に説かれた「四つの罠」について語っていく。最初は、「紛争の罠」である。ポール・コリアーは、紛争は、貧困と深く結び付いていることを経済学的に論証した後、こう結論付ける。最底辺の国々(その70%はサブ=サハラ・アフリカ諸国である。)で起る内乱・紛争は、民族間の対立ではない。経済格差が生む経済対立である。しかも貧困は、兵士を生む。明日生きれるかどうかわからない、教育を受けていない若者は、兵士となることでわずかだが、豊かになるチャンスを手に入れることが可能である。
 私はポール・コリアの論は正しいと考えている。
 
 で、冒頭の話になるのだが(別に、黄海海戦を描いた「勇敢なる水兵」の軍歌を歌ったわけではない。)、このところ、例の某国の砲撃騒ぎで、黄海上で米韓軍事演習が行われている。もしやの第二次朝鮮戦争が起こるやもしれぬというニュース解説を『枕』にしたのである。さて、もしもの場合、君たちは義勇兵として戦争に参加するや否や?と問うたのである。今日はうまいこと男女クラスのA組だった。男子に聞くと、全てNOであった。では、もし君たちが今の立場でなく、食事もろくにできず、雨露をしのぐ場所もないような、公園でオヤジに「解散!」と宣言されたような、貧困の中にいればどうか?とも問うたのである。これには、「うーん。行くかもしれませんねぇ。」と、先ほどの威勢は無くなった。非常に強引なシミュレーションだが、「紛争の罠」の中心概念をイメージできたようである。

 さらに話は、1万ドルあれば小規模な軍隊が組織できること、衛星電話があれば鉱産資源を抑え、そのレントを確保する交渉が可能なこと、などアフリカで現実に起っていることを紹介した。
 最後は、アンゴラ内戦の構図である。クラスを海側の石油が出る首都ルワンダ側(政府側)と、ダイヤモンドが出るゲリラ側に分け、大統領選挙をやるというシミュレーションである。

 ESDの重要な柱に、「平和教育」がある。単に戦争の悲惨さだけを訴えるのではなく、貧困との関わりの中で教えて行く意義を私は主張したい。貧困が兵士を生むのである。それだけは、少なくとも生徒に伝わったと思う。

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