2010年11月12日金曜日

「ロボラ」のロールプレイ

 今日は、現代社会で、『ロボラ』のロールプレイをした。ロボラとは、ジンバブエでの名称だが、アフリカの結婚システムのことである。アフリカでは、一夫多妻制が普通である。ただ、この一夫多妻制、買婚とも揶揄されるように、新郎が、新婦の親に対し、牛や羊(都市では現金となる)を渡すことで成立する。このことは、男尊女卑の構造を生む。未婚女性は、親にとって商品となるし、既婚女性は男性の所有物扱いとなるのである。アフリカで、女性の識字率や就学率が低いのも、この結婚構造によると言えなくもない。一方、資産と力のある男性のDNAのみを残すという自然界の摂理であるともいえる。この是非も含めて、今日は、「ロールプレイ」という方法で授業をやってみた。ロールプレイとは、シチェイションと役割を設定し、その役になりきって語りあうことで、疑似体験する参加型学習である。実はこれまで何度もやっている題材である。久しぶりに実践というわけだ。役割設定は以下の6人である。よって、6人グループで行った。ジンバブエの文献を元に作っているので、固有名詞は正確、実際にありそうな名前である。

①結婚前の男性 マイケル・サカニョリ ハラレ生まれ。24歳。センカンダリースクールを優秀な成績で卒業した。現在は、ハラレのダウンタウンにあるスーパーに真面目に勤めている。給料は安いし、インフレが進んでいるのでロボラのために預金しているが、とても目標額までいかない。リンダと早く結婚したいが、ままならない。ロボラさえなければとは思うが、ロボラを払わないでリンダと結婚できるとは思っていない。

②結婚前の女性 リンダ・マジョ ハラレ生まれ。23歳。マイケルとは勤めるスーパーで知り合った。マイケルの稼ぎが悪くてなかなか結婚できないという理由の他にも、ロボラに対しては内心腹立たしい思いがある。母親は、父親に対して絶対的で、奴隷のようだと感じている。またロボラの収入を父親が当てにしているのも悲しいと思っている。だが、そんな思いを親にも彼にも言うことはできない。

③リンダの父親  ジョージ・マジョ カドマ生まれ。49歳。村で白人農場で働いていたが、若い頃ハラレに出てきた。今は食品工場に勤める労働者。子供は長女のリンダと次女のマリアン(17歳)、長男のマザーン(10歳)。リンダをセカンダリースクールのフォーム4まで行かせたのが自慢。マリアンも同様の教育を受けた。彼女らにかけた教育費を始め、養育費をロボラとして受け取るのは当然だと考えている。

④リンダの母親 アロイシア・マジョ カドマ生まれ。40歳。ジョージと結婚し、ハラレに出てからは屋台のサザの店の手伝いをしている。ロボラのおかげで、ずいぶんつらい目にあった。「お前のためにいくらロボラを払ったかわかっているか。」と夫から暴力を受けたり、離婚したくても自分の両親はすでにロボラを使いきっており、どうしようもない。リンダに同じような苦しみを受けてほしくないが、そんな事を言ったらどんな目に遭うか恐ろしいので黙っている。

⑤日本のNGOの女性(自分の名前をつけよう。男子は最後に『子』をつけよう。)大阪出身で、大学で政策科学を学んだ。アフリカ支援のNGOに参加し、ケニアやマラウイで女性の地位向上を目指して、識字率向上のための教室を開いてきた。ロボラに対しては、女性の人権問題として批判的である。ジンバブエには、白人向けの、ロボラを伴わない婚姻法も存在していることを、広く宣伝すべきだと思っている。

⑥日本のNGOの女性(自分の名前をつけよう。男子は最後に『子』をつけよう。)東京出身で、大学で文化人類学を学んだ。アフリカ支援のNGOに参加し現地で活動するうち、アフリカ人が安易に欧米の技術や経済的豊かさを求めていることに危機感を抱いている。アフリカには各部族の伝統や生活の知恵がある。たとえば、マサイ族では、男性は自分の家を持たない。ロボラによって得た3人くらいの妻の家を夜ごとに移動する。客人が来たら、妻の家に泊め、もし客との子供ができたとしてもゆるされる。子供は村全体でぞだてるからだ。ライオンや他部族との戦いの中で、男性が少なくなっても子孫を残す知恵であうと考えている。

 マイケルのつぶやきから、ロールプレイは始まる。まあNGO職員立会いの下の家族会議開始!である。A組もB組もこれが、すこぶる盛り上がってしまった。さすが3年生である。オヤジ役が、「イカンといったらイカン!」と熱弁をふるったりしている。(笑)約15分、楽しい参加型学習であった。結局、皆に聞いてみた。ロボラを是とするものはゼロ。否とするものは、各クラスで、5人から10人。残りは、アフリカの伝統文化を我々が否定することはできないのではないかという意見だった。

 前回、終了間際に、ケニアの”マライカ(天使)”という歌(スワヒリ語である)をCDで聞かせた。
Malaika nakupenda malaika Malaika nakupenda malaika

nami nifayeje kijiana mwenzio nashindwa na mali sina we ningekuoa malaika
日本語訳/ 天使 愛しているよ天使 私はどうしらいいかわからない。私はやぶれてしまいそう。 財産がない、私はあなたと結婚できない。

 今回の授業で、生徒諸君は、この歌の意味が理解できたのであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿