2023年3月28日火曜日

ポストウクライナ戦争の世界

内容とは関係なく、学園・食堂前の満開の桜
「おどろきのウクライナ」(大澤真幸&橋爪大三郎)の書評、最終章「ポストウクライナ戦争の世界」についてエントリー。ウクライナ侵攻が始まってすぐに、国連で非難決議が採択された。棄権した国が40カ国あった。これは(ワグナーという傭兵集団を派遣して軍事援助してきた)ロシアへのシンパシーというより、アメリカを始めとした西側への「構造的暴力」(この本の中では、こういう語は使われていないが、開発経済学で言うグローバリゼーション下の途上国への搾取的な構造)への反発ではないか、と両者は見る。

この西側世界に挑戦する候補として、橋爪氏は第三世界(経済的実力、ネイションの形成、団結する共通の価値観、が無いゆえに当分主役に離れない)、ロシア(経済力がない、核戦力は世界を主導できない、冷戦後、世界をどうしたいのかという理念がない)、イスラム(人数も多く、普遍的価値も信念もあるが、中心になる国がない、ネイションとの折り合いも悪い)、インド(インドの本質は小宇宙、分裂していた歴史が長い)などを挙げるが、結局のところ、中国しかないと結論づける。十分な経済力があり、十分な核戦力と通常戦力があり、戦略とビジョン(一帯一路)を持っているからだというのが理由である。

橋爪氏は、ジェネリック薬品を例にとって、中国経済のメカニズムは、後発の優位性を活かしている。逆に言うと国際市場から切り離されて、資本技術が入ってこないとこの発展モデルは終わりになると断言。大澤氏は、中国の歴史を鑑みて、始皇帝の時代から中央集権を行い、同時に地方の統治機関、地方政府の自律性・主体性が認められていた。この伝統が資本主義にうまく適応できている所以だと主張し、この2点は両氏の共通理解となっている。

…私は中国経済のこれからについては、極めて懐疑的である。デカップリングをアメリカがさらに本気でやったら、かなりの打撃を受けるはずである。世界第2位の経済力がある、世界の工場だといっても、実際のところ最先端の半導体を中国は国産化できない。安かろう悪かろうのスキルしかないわけだ。しかも共産党の政治優先の姿勢は、このところ外国企業の離反を促進している。不動産バブルのこともあって、長くはないと私は見ている。と、同時に西側諸国もこのところ、疲弊している。フランス、ドイツなどでデモやストライキが起こっている。ドイツ銀行もあぶないという噂もあって、一寸先は闇の国際情勢である。…つづく。

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