2023年3月24日金曜日

中国資本主義 論考(前)

http://blog.livedoor.jp/pacco303/archives/84924839.html
「おどろきのウクライナ」(大澤真幸&橋爪大三郎)の第2章は、「ウィグルと中国の特色ある資本主義」というタイトルである。(ウィグルの話はほとんど出て来ないのだが…。)中国の資本主義を解明するのはかなりの難題である。2人の社会学者は、これまでの学説を振り返りながら論考を進めていく。

資本主義と民主主義は車の両輪のように連動していいるというのが、社会科学の常識であるが、中国は違う。まず大澤氏は、中国の伝統的な論理に歴史の短い近代的な要素がブレンドされた、専制政治と資本主義が結びついた”権威主義的資本主義経済制度”と呼ぶにふさわしいと述べている。

橋爪氏は、専制政治こそが資本主義の揺り籠となったのか。西洋中世史や日本の近世初期のように、立法権を絶対王政が握り、軍隊維持のために金が必要であったことが背景にあると説明。中国でも2000年にわたって専制政治と経済的繁栄が共存してきたという歴史的経験値を確認。中国が新しい資本主義のオルタナティヴを示している意識など無いとした。

大澤氏は、「国家は何故衰退するのか」という先行研究を提示し、包摂的制度を持っている国家は繁栄するという経済制度の一般論から、政治制度の方が重要との結論を紹介。この成功する政治制度は、リベラルデモクラシー(権力の配分が社会的多元性を持つ)と、十分な中央集権化という2つの条件が必要だと述べている。さらに先行研究「世界システム論」にある、後発国が資本主義に参加したら隷属的な位置に陥るという社会科学的な一般論では、今の中国を説明できないとした。最後に「資本主義だけ残った 世界を制するシステムの未来」が説く、2種類の資本主義を紹介。メリトクラティック(能力主義的)でリベラルなアメリカ型資本主義とポリティカル(政治的)キャピタリズムで、大澤氏はポリティカルよりオーソリテリアン(権威主義的=中国の資本主義)の方がいいと思うと述べている。…資本主義は民主主義が成立しなければ成立しないというこれまでの常識は中国によって覆されたわけだ。

橋爪氏は、西洋史を俯瞰しながら、資本主義の発達のパターンを示す。まずイングランド型。英国国教会がカトリックを離れ、世俗権力が教会のトップについた。これで権力が絶対化し、資本主義の揺り籠となった。フランス型。カトリックもユグノーも廃し、絶対王権は哲学と組み合わさった。そしてアメリカ型。アメリカ植民地では、カトリックはアンチクライスト(反キリスト)であり、プロテスタントの各教会は神とつながっているものの普遍的ではない。さらにメイフラワー契約や合衆国憲法にあるように契約で法人(各コロニーや各教会)を構成した。この(普遍的でない)教会と(契約でできた)法人という組み合わせは、イギリスの(国教会でないと公務員になれないというような)硬直した英国国教会+立憲君主制より資本主義にとってはうまくいった。イギリスは国教会の硬直性を取り除きアメリカ型になり、フランスも哲学は(普遍的ではない)教会のことだと読み替えることでアメリカ型になった。3つのパターンに統一されていくわけだ。…前編はここまで。

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