2017年7月8日土曜日

シリア人ハーシムのオデッセイ

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「シリア難民」(パトリック・キングズレー著・ダイヤモンド社/16年11月発行)を読み終えた。著者は、各地で様々な難民の取材を行っているのだが、本書の中心軸として、シリア人のハーシム氏のスウェーデン行をドキュメントで追っている。もちろん、ずっと一緒に同行していたわけではないが、迫真のドキュメンタリーとなっている。

シリアから脱出し、妻子共々エジプトに避難したものの、過酷な扱いを受け、文字通り必死でスウェーデンを目指す「旅(オデッセイ)」。家族を置いてアレクサンドリアから1人密航船でイタリアへ。イタリアから迷いに迷ったあげく、フランス・ドイツ・デンマーク経由でスウェーデンにたどり着く。家族を呼び寄せる永住権を得るのにもかなりの困難が待ち受けていた。

あまり詳しく書かないほうが良さそうだ。私は多くの日本の方、特に社会科の教師と大学生に読んでほしいと思っている。

シリアを始めとした難民を生む「地獄」のような環境は、日本では想像を絶するものだ。その難民を送り出すリビア、エジプト、トルコなどの非人道的な状況も想像を絶するものだ。中でも私が驚いたのは、トルコで売られている救命胴衣の話である。需要と供給の市場経済らしい話ではあるが、難民の増加に伴い街中で堂々と救命胴衣が売られているらしい。中にはスポンジを使った粗悪品もあるそうだ。全く意味をなさないばかりか、海水を吸って溺死させるような代物だ。

ヨーロッパ各国の難民への取り組みに関しても、かなりの問題点を本書は突いている。詳細は、これも書かないほうが良いだろうと思う。ただ、本書の最後に記されているようにヨーロッパの孤立を守ろうとする意志より、生き延びたいという難民の意思の方がはるかに強いことは確かだと思う。

…私は、この本をマレーシアで読んでいる。マレーシアは中進国ながら、平和で豊かである。同時に、日本では見かけることの少ない海外からの不法移民とされる人々も多くいる。KL市内で先日も多くの不法労働者が捕まったらしい。彼らの故郷の状況はKLにいてはわからない。だが、ローカルのバスで会う彼ら(特に工事現場などで働く人々に多いらしい)の目を見ていると、ワイシャツで通勤する私などには容易に心を開いてくれそうにもない厳しさがあるように思う。彼らの工事現場での労働の過酷さを目にしたり、あるいは低賃金さ耳にすることもある。彼らは難民という立場ではないが、これも今の世界の現実である。

…この難民問題、地球市民としては、あくまでも自分とのかかわりの中で考えていくべきだと思うのだ。「シリア難民」、お勧めの一書である。

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