2017年2月6日月曜日

IBTの話(79) F36B 初授業

スクール・ホリデーが終わって、授業再開である。先日卒業したF36の学生の後輩たちは、F38と呼ばれている。IBTでは20ヶ月コースは偶数で、1年コースが奇数で呼ばれるからである。ところで、まだF38の学生の日本語レベルは、総合科目を学ぶには心許ない。昨年、私は4月の時点から教えたが、この時期の1ヶ月、2ヶ月の差はすこぶる大きい。現在、F38文系は2クラス。総合科目は週4コマである。T先生に、1月から地理分野を受け持ってもらっているのだが、私もF36の学生の授業が終わったので、公民分野として参戦することになったのだ。と、言っても政治経済をやるには、前述のように、日本語能力に無理がある。そこで、T先生と相談したところ、2月は私が週1コマだけ持つことになったのだ。つまり、2クラスなので、週2コマが私の授業となったわけだ。3月は、週2コマずつになる算段である。徐々に公民を増やし、4月からは、公民の方がコマ数が多くなる。最初は、文系は3クラスになる、あるいは1年生の特進コースもできるという、社会科の2人にとっては、なかなか緊張感のある予定だったのだが、実際のところ、授業数が一気に少なくなってしまったのだった。でも、日本の高校では、この時期、3年生の授業主体の私などは、週ゼロの年も何度もあった。あまり深刻に考えないことにした。

で、今日は国費生主体のBクラスの初授業だった。一度、顔を見せに行ったことはあるが、私自身の授業としては初である。いろいろ考えたのだが、多文化理解から始めることにした。特に、一神教について、大まかに、まずやってしまおうと考えたのだ。ムスリムの生徒が多いので、かなり知っている話題でもあるし、受け入れやすいと考えたのである。一神教は、歴史分野や国際関係の授業で必ずバックボーンとして不可欠な知識である。

国旗の話から入った。日本とアルゼンチン、パキスタンとアゼルバイジャン。それぞれ、太陽を描いた国と太陽を嫌い、月と星を描いた国。文化の違いは歴然である。ちょうど、T先生がケッペンの気候区分を熱心に教えてくれているので、世界地図を描いて、その気候の相違と法則性を確認していく。社会科学という概念をすり込んでいくのである。学生は、社会科学の法則性を面白がっていた。さらに、スウェーデンとジョージア(旧名グルジア)の国旗には十字架、あるいはイスラエルにはユダヤ教のシンボル・ダビデの星、インドにはアショカ王の仏教の印章などが描かれている話から、文化の相違における宗教の重要性にもっていく。

ここで、私は少しずるい手を使った。日本では、そもそも旧約聖書などに出てくる預言者はヘブライ名で普通教える。だが、アブラハムはイブラーヒームと呼ぶ。ノアはヌーフ、モーセはムーサーとアラビア語名を使うのだ。彼らの属性に訴えていくのである。この方が、極めて価値的である。日本語がまだ十分でない分、こういう工夫で補っていくしかないなあと熟慮した結果である。(笑)

ともかくも、最初の授業は十分満足のいく内容だった。これからも、コマ数が少ない分、全力で取り組んでいくつもりだ。ちなみに、授業の少ない分、日本の文科省に提出するべき書類の作成のお手伝いをしている。明日からは、一日中書類とにらめっこしながらエクセルの日々になりそうだ。

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