2015年1月16日金曜日

日経 途上国の経済発展8条件

IMFデータより作成。65年のインドネシアは67年のデータ。
日経の経済教室で、久々に開発経済学の論文が載っていた。モーニングでは、メモする時間がなかったので、コンビニで改めて買い求めたのだった。中野武彦ADB(アジア開発銀行)総裁の「途上国の経済発展に8条件」である。

アジアは絶対貧困の人口比率(1日当たりの所得が$1.25以下)が90年当時で55%だったが、10年には19%まで低下した。日本などを含めたGDPの世界比率は70年の約15%から、13年には30%強に達した。08年の世界金融危機以後の成長も強固である。とはいえ、各国間の発展には差がある。それの理由を解明しようと、中野氏はADB総裁になって以来各国を回り、今回この8条件を提示しているわけだ。

第1は、インフラ投資。GDPに占める比率(2010年)を見ると、中国の22%に対し5%以下の国も多く、それらの国の発展は遅れがちである。インフラ投資をGDP比で1%高めると、成長率は1.3ポイント上昇する。

第2は、教育や保健など人的資本への投資である。ほとんどの国で小学校への入学率は高くなっているが、卒業率・中等高等教育の質は課題が多い。また、医療へのITの活用と国民皆保険制度への移行などをADBは進めているそうだ。

第3は、マクロ経済の安定。インフレ率が2ケタであったり、財政赤字が大きく金利が大会ようだと将来のための貯蓄や投資は阻害される。

第4は、開放的な貿易・投資体制、民間セクターの促進である。インドやインドネシアでも社会主義や反植民地主義の影響から輸入代価政策、価格統制、産業の国有化などを進めていた時期があり、成長を大きく妨げた。今は市場機能が基本であることを理解しない指導者はいない。ASEANの経済共同体構想は、関税の引き下げや通関手続きの簡素化、基準の標準化などに大きな役割を果たすだろう。

第5は、政府のガバナンス。汚職は社会正義に反するのみならず、人々のエネルギーを非生産的な行動に向け、成長を阻害する。政府や国有企業の透明性、説明責任の向上も不可欠。中央アジアを含む多くの国で、この問題に取り組む機運が高まってきている。行政の執行能力や規制の質が各国のパフォーマンスと密接に結びついている。有能な職業官僚集団の存在も重要である。

第6は、社会の平等度である。資産家と庶民の格差があまりに大きい国では、成長という目標が国民に共有されないし、教育や技術習得への意欲は弱まり、労働者の質も高くなりにくい。公教育の強化、税制による所得の再分配、農村と都市の格差是正、農家や中小企業向けの金融などが必要である。健全な中間層は、消費をけん引し、政治的な安定性をもたらす役割もある。

第7は、将来へのビジョン、戦略である。韓国やシンガポールを見れば明らかである。自国の強みを生かした発展させていく政府の責任は大きい。

第8は、むしろ最初にくるべき条件で、政治や治安の安定、周辺国との良好な関係である。スリランカは、09年にタミル人との内戦が終結した後平均7%台半ばの高成長を続けている。ミャンマーも国際社会との関係を改善したことで投資ブームを招いた。最近のフィリピンのミンダナオ島のイスラム勢力との包括合意も明るいニュースである。

これらの政策をきちんと実行すれば、多くの国が高中所得国のレベルに到達できると考えられる。しかし、指導者はわかっていても、既得権益に手をつけることになり、政治的な対立に巻き込まれがちであることも事実だ。

…今回の「高校生のためのアフリカ開発経済学テキストV6.01」は、アジアの開発から説きだし、アフリカとの相違を論じている。この8条件、私も当然認識している話だが、現実に奮闘されているADB総裁の言である。心してエントリーしておいた次第。

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