2013年7月17日水曜日

毎日夕刊 ブルキナの夜間学校

JICAブルキナファソの理数科教育のセミナーにて
毎日新聞の夕刊に、平川哲也記者の『ブルキナファソ夜間学校から-学ぶことに飢えている-』という記事が出ていた。ワガドゥグには200を超える夜間学校があるという。小学一年生のクラスで最高齢(35歳)のクアラ・ジャンマリ氏の話が中心である。ワガの西25kmにあるヤオゲ村の穀物農家の次男。兄弟10人のうち長男と末弟だけが小学校に入った。両親と共に耕作と家畜の世話に明け暮れる少年時代を送った。「家族を支えている誇りがあったし、畑仕事にも学ぶことがあった。」と振り返る。学校に通う近くの子供をうらやむこともなかったという。ところが、出稼ぎで隣国コートジボワールに向かった22歳の時、母国と同じフランス語圏ながら、話せないし、看板の文字も分からない。乗り継ぎのバスを間違い、途方に暮れて思った。「勉強が必要だ。」カカオ農家に10年勤めた後、ワガドゥグの自動車部品会社に職を得たが、昨年10月から夜間学校に入学したのだという。アルファベットは覚えれたし、やさしい文章なら書けるようになった。毎日ワクワクしているとのこと。6歳から始まる10年間の義務教育は無償だが、この夜間学校には一切公的支援がないそうだ。月賦で授業料を支払いながらの学生生活で、授業料が支払えずやめざるをえない人もいるという。この夜間学校の名前「ソングレ」は、モシ人の言葉で「助ける」を意味するという。

なかなか有用な記事であると私は思う。ブルキナファソのHDI(人間開発指数:開発経済学で、貧困の度合いを示す。)が世界最底辺レベル(統計の出ている国の後ろから3番目くらい。)に位置するのは、HDIの主な三要素のうち、経済力を意味する1人あたりのGDPというよりは、教育と保健医療のレベルが極めて低いからである。私は、ブルキナファソに行った時、JICAのカウンターパートナーだった教育官僚と話したことがあるが、現在、6歳からの義務教育が無償化されていることに感動した。大きくブルキナの教育は進展している。

記事の中で、平川記者は夜間学校に公的支援を行う必要性を大きく主張している。その想いはよくわかるし、同感なのだが、いずれそうなるだろうと思う。政策には優先順位がある。まず適齢期の子供の教育が重要なのは間違いない。教員の資質向上も重要だ。JICAの専門家の意見では一様に教員の資質はひどいらしい。一気に改革が進むとは思えない。ジャーナリストとして、この問題を問いかける意義は大きいが、そういう必要不可欠な時間的側面もあるのではないか、と私は思う。

もうひとつ。ブルキナの人々の真摯な『あたりまえ』に働く姿が、クアラ・ジャンマリ氏の言に潜んでいる。学校に行けなかったことを彼はマイナスに捉えていない。実際、識字の必要性を感じてから、ワクワクして学んでいる。この前向きさ、ひたむきさ。まさに我々が学ぶべきアフリカの『あたりまえ』があると思うのだ。私は尊敬さえすれ、上から目線で彼の人生を見るべきではない。モシ語の「ソングレ」は、きっとスワヒリ語の「ハランベー」同様、互いに支え合うという意味合いの強い「助け」であると思うのだ。

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