2013年7月30日火曜日

「インドは今日も雨だった」を読む

古本の文庫本で、蔵前仁一の「インドは今日も雨だった」を読んだ。先日もエントリーしたように、今夏はどこへも行く予定がない。下川祐治に続いて、ついバックパッカー本を読んでしまうわけだ。蔵前仁一は、『旅行人』という雑誌を発行している人で、バックパッカー本の総元締めみたいな人なのだが、彼の描くイラストがユーモラスなので、どの著作もやわらかい感じがする。

さて、この本は、インドでも変ったトコロの紀行文である。そもそもチベットに行くつもりだったが、外国人旅行者を中国が締め出していたので、それならと、インドの北部、ダライ=ラマが住むチベット文化圏を訪ねようという旅の話である。私は、昔々妻と共にインドに行く予定はあったのだが、妻が直前に交通事故に合ってぶっとんだ。以後、インドはもっぱら息子のテリトリーになってしまった。とにかくインドの旅はタフな旅になる。正直、体調不良の私には、バスの乗り継ぎの話だけで疲れてしまうのだ。

読んでいて疲れた話その1。ダラムサラにチベット難民が作った街マクロード・ガンジの安宿(チベッタン・アショカ・ゲストハウス)で出会った吉川君という優男風の大学生の話だ。彼は、ラサから途中のサガまでバスとトラックのヒッチで行きカイラス(チベットの聖地の超有名な山。シバ神のリンがを象徴する。)まで、初冬の道を歩き通したという。食糧はと聞くと「とりあえず…、ツァンパと水だけで。」ツァンパとはチベットのエスニックフードで、大麦の粉を炒っただけのもの。蔵前仁一はこう書く。「それだけで、初冬のチベット高原を500kmも歩き通すとは、おまえは河口慧海か!」…私は大笑いした。こういう教養に裏打ちされた蔵前仁一の文章が大好きである。ちなみに河口慧海は、『チベット旅行記』を表わした明治の禅僧である。大笑いした後、初冬のチベット高原の雪道を想像して、どっと疲れたのであった。たしかに無補給・ノー・サポートでやってのけた吉川君は凄いのだ。

読んでいて疲れた話その2。マラナという村があるらしい。変わった村で、村人に触れてはならないという掟を持っているという。ただし、バスもなく、かなり峻嶮な山道を登って行かねばならない。蔵前仁一と小川京子夫妻は、そのトレッキングに挑むのである。なんと9時間半。読んでいて大いに私は疲れ切った。(笑)しかも、この触れてはならないという掟、最初のうちは、どうも気苦労が絶えない。彼らは旅行者を汚れた者としてあつかっているヒンドゥー教徒なのであった。蔵前仁一は、この村の変わった掟はともかく村自体はいたってのんびりしたところで、なんとなくマリのドゴンの村を思いだしたと言う。雰囲気が似ているそうだ。

体調不良の夏季休業中の身の上には、面白いが疲れる一冊だった。(笑)

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