2011年3月2日水曜日

多文化共生の難しさ

   先日、毎日新聞におよそ次のようなコラムが載っていた。イギリスの首相が、「イギリスの多文化共生政策は失敗した。」と表明したというのだ。それ以前にドイツの首相も「多文化共生政策の失敗」に言及しているとのこと。ヨーロッパでは、かなり多文化共生に嫌気がさしているらしい。ドイツはトルコ系の、イギリスはアラブ系の移民の存在に大いに困惑しているのである。彼らは、ともに「消極的」に移民の流入に対応してきた。ここにきて、排除できないものの、なんらかの「積極的」対応策を考えているらしい。フランスは、それに対して「積極的」に排除を口にしてきた。特にイスラム系移民への国民の反発は大きい。さすが、フランス(ヨーロッパの)中華共和国である。

さて、サンパピエという言葉がある。以前紹介した(2010年4月10日付ブログ参照)、エッフェル塔の下でみやげ物を売っているガボン人などのようにインフォーマルセクターに従事しているフランスの不法滞在者のことである。彼らは、フランスの大企業などにも雇用されたりしているらしい。詳細は下記のブログが詳しい。
彼らサンパピエは、フランス政府の排除に対して、決して後ろに引いていない。フランス世論では、人権的な立場と、フランス人のシティズンシップとが、がっぷり四つになって対立しているわけだが、ここで、注意したいのは上記のブログでは、ナジョナリズム的シティズンシップ(国民という概念に近い)という意味合いで使っていることだ。私のように国際理解教育に携わっている者にとっては、まったく反対の概念と捕らえている。うーん、社会学的な語彙は難しい。下記の記事が詳しい。

大企業や農園などが、グローバリゼーションという弱肉強食のリングで勝つために格安の賃金労働を求める限り、社会として不法移民の必要性が生まれる。底辺国では、出稼ぎの需要が高い。最も弱い立場で搾取されるだけ搾取され、そして排除される。彼らは、こういう先進国と途上国を貫く「構造的暴力」に「ノン」を突きつけている。ヨーロッパにおける大きなエンパワーメントなのだ。

多文化共生ということは難しい。地球市民を育む教育がその未来を担っている。イギリスなどは、こういう教育の最先端をいっているのだが…。うーん、とまた唸りながら筆を置く。

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