2011年3月9日水曜日

アフリカの国際経済回廊計画

アフリカ開発経済学テキストV4.01を書き直している際に、おもしろい資料をみつけた。「2025年のアフリカ経済:今後アフリカはどう変化するか?」という、三菱UFJサーチアンドコンサルティングの主任研究員・田中秀和氏の論文である。http://www.murc.jp/report/quarterly/200901/57.pdf
この論文、なかなかおもしろい。およその構成は、人口の推移、鉱業・エネルギー資源、国際経済回廊の展開、資源開発から産業開発へ、今後の発展への期待、という流れである。私は、中でも「国際経済回廊」の部分に特に注目したい。

「アフリカ大陸には15の内陸国があり、なかにはザンビアのようなに資源の豊富な国も多くあり、これら内陸国からの港へのアクセスルートを確保し、かつルート沿いの資源と産業の開発を促す『経済回廊』構想がアフリカ各地で提案されている。また電力資源国と消費地をつなぐ広域パワープール構想も実現されつつあり、アフリカの経済発展は国境を越えた広域的単位での発展を志向しており、世界銀行、アフリカ開発銀行、南部アフリカ開発銀行などの国際金融機関を巻き込んだインフラ開発への協力が展開されつつある。」(田中論文より引用)

論文によると、現在、20以上の国際経済回廊計画・構想があるらしいのである。西アフリカでは、ナイジェリアからベナン、ブルキナとニジェールの国境沿いからマリ、そしてセネガルへと続く『ニジェール回廊』、リベリアからナイジェリアまでのギニア湾岸を結ぶ『ギニア湾回廊』、ナイジェリアのラゴスからカメルーン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ウガンダを経てケニアのモンバサまで続く『ラゴス=モンバサ回廊』などである。既に稼働している回廊は、モザンビークのマプト港から南アフリカ内陸部を結ぶ『マプト回廊』があるこの回廊沿いにはアルミおよび関連産業が立地する工業自由区があり、南ア資本によって産業集積が起きているらしい。南アではダーバン港の容量が限界で、マプト港を代替港としたいようだ。さらに、モザンビークは、マラウイ、ザンビアにまたがる『ナカラ回廊』を計画している。ナカラ港はマプト、ベイラに次ぐ港で、良港らしい。インフラ整備でかなり発展が期待できるという。やはり、モザンビークのように海に面している国は圧倒的に有利なのだ。

開発経済学テキストのなかでも「内陸国の罠」でふれているが、アフリカは内陸国が多すぎるのである。サブ=サハラ・アフリカのバランスの取れた開発に、この「経済回廊」が大いに有用なことは間違いない。民間資本の投資増大のための重要な社会資本の充実が必要なのだ。ここでもバランスが重要である。<今日の画像は、ケニアの国道:静岡のM先生撮影>

ところで、北朝鮮がジンバブエに食糧援助を求めているというニュースが流れている。様々な憶測が流れているが、その意図はどうあれ、あまりの馬鹿馬鹿しさにコケそうになった今日の私であった。

2 件のコメント:

  1. この論文、面白いですね。
    ブルキナファソの例ですが、歴史的にコートジボアールへの一極依存でしたよね?たとえば鉄道なんかもアビジャンから出ています(これは話題のカダフィも一枚かんでいて、ニアメイ-トリポリまでつなげるという話があったらしいですが…)。92年のウフエ=ボワニ逝去の際の教訓があり、その後はガーナ、トーゴ、ベナンとの関係を強くしました。そして、現在、ワガドゥグ‐ガーナルートの大拡張工事が急ピッチで進んでいます。ブルキナファソだけでなく、ガーナにとってもここは生命線なようです。なにせ、この時期の野菜の多くはブルキナファソから輸入しています。私のプロジェクト地、コングシあたりにはガーナから野菜買い付けのためのトラックが大挙して押し寄せています。

    ちなみに、サハラ交易と呼ばれるルートは数百年前から網の目のように張り巡らされています。ぜひこちらの本もご参考にされてください。

    坂井信三2003『イスラームと商業の歴史人類学 西アフリカの交易と知識のネットワーク』世界思想社

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  2. 荒熊さん、コメントありがとうございます。時折、こういうPDFの専門資料をプリントして読んだりしてます。なかなか参考になるのもあります。ガーナとの街道がそういうふうに利用されているとは思いませんでした。石油が運ばれてくる道というだけの理解でした。ところで、この野菜を買い付けにくるガーナ人、エスニックで特定されるのでしょうか。ケニアの牧畜の買い付けはキクユ人だけらしく、その辺がまたアフリカの面白さでもあります。こうして日本にいると、ムズムズしますね。(笑)

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