2011年1月21日金曜日

ミニ国連 2010 TPP論議

B組のミニ国連風景(1/20)
 ミニ国連でTPPについて是非とも審議したかった。(12月9日付ブログ参照)ただ、ミニ国連というシチェーションでは、リアル感に欠ける。そこで生徒と相談したのだが、やはり日本国内の論議にしたいとのことだった。そこで、昨日の授業終了後、A組、B組にカードを7枚ずつ配って、議長国にこれまでの国別のグループをそのままにして、自由にアソシエーションを考えておいてほしいという突然の依頼をしておいた。私は、授業に行くまでどんな組み合わせになっているのかも知らなかったのである。(笑)この辺、本校生は見事に対応してくれる。

 というわけで、5時間目のA組。アメリカが「個人農家」、中国が「JA」、マリが「経済学者」、クウェートが「民主党」、日本が「自民党」、アイスランドが「漁民」、ハイチが「スーバーE」(Eは、本校の南側にあるスーパーの店名である。)」という組み合わせだった。なかなか面白い。議論は、「個人農家」が口火をきった。昨日埋没したアメリカのメンバーである。彼らの主張は強烈だった。日本農業は、ブランドを確立し、自由競争に打ち勝ち、海外進出を積極的にすべきだというのである。これに「経済学者」が噛みつく。「不可能だ。」「中国で高品質・高価格のブランドの野菜を売る!」なかなか、良く調べているではないか。(笑)これは経済学者の負けである。言い合いになったので、私が中に入り「個人農家」の勝利を宣言した。実際、青森のリンゴや、台湾でのブランド日本米など成功例がある。
 一方、「JA」は不安を口にした。「漁民」も、危惧を表明した。「スーパーE」は、安ければ売れるのでTPP支持を表明した。さて、「民主党」である。彼らは「TPPについて楽観しています。」と述べた。失笑が教室を支配した。リアルである。(笑)私が、「ところで、誰が首相なの?」と聞いたら、じゃんけんをしだした。教室内は爆笑である。これは、あまりにリアルすぎる。「自民党」は、「民主党」の意見を聞いたうえで、TPP反対を唱えた。これもリアルである。この審議、結局「個人農民」の自由競争案に対して、議論を集約した。「JA」は重ねて不安を訴える。「民主党」「自民党」に、どうすればいいか聞いてみた。「民主党」は、農業を守る為、補助金を出すと言いだした。「自民党」は、農村の中で農業を再構築すべきだという。離農する人や高齢者のもつ農地を地域で再分割し、集団で生き延びるべきだという。おいおい、君たち両党のマニフェストを読んだのかあ?偶然にも、両党の政策に近い提案が飛び出した。これは面白い。
 TPPの論議が、やはり国内では農業問題への対応策論議となった。「個人農家」の主張する資本主義的なあまりに資本主義的な競争原理でいくのか、「民主党」の言うように補助金で農家を守るのか、「自民党」の言うように集団で農村を、合理化していくのか。リアルな論議になってしまった。これについては、「自民党」の集団的な合理化案にA組は賛成票が集まった。「ところが、これが難しいのである。」と説明を加えているうちに時間が迫ってきた。今回は、あくまで生徒に個人としてTPPの是非を問いたい。議長に裁決を頼んだ。圧倒的多数でA組ではTPP賛成であった。

 6時間目のB組の組み合わせは、ハイチが「政府」、日本が「SONY」、マリが「経済学者」、中国が「農協」、アメリカが「Softbank」、アイスランドが「個人農家」、クウェートは「大阪のおばちゃん」(笑)だった。ここでも、同様に日本の農業問題に論議が進んだ。B組では、「経済学者」が、この問題の本質をよく理解していて、A組で巻き起こった三種の農業政策論議へとうまく誘導してくれた。高校生が考えることも、国会議員が考えることも大きく違わないことが凄い。最後に、「SONY」のメンバーが言った。「製造業の方は、どんどん中小企業がつぶれている。農家は甘えてんのんちゃうか。」うーん。厳しい一言だった。おそらく日本はTPPに参加せざるを得ないだろう。B組も5人の反対者が出たが、圧倒的多数でTPP参加という結果になった。やがて現実になるだろう、妙にリアルなTPPの論議だった。

2 件のコメント:

  1. TPPへの流れは止まらないと私も思います。ワタミの社長が、「農業を守るのか、農家を守るのかはっきりしてほしい」と語っていましたが、TPPは一つの(民主党が出した)結論になりそうですね。

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  2. 哲平さん、コメントありがとうございます。私は、市場を飼いならしながら、何かしらの農業の再編が必要だと思います。生徒たちが、考え、到達した論議が、結局今の政治家とそう変わらなかったことが、私には面白い。彼らの近未来の話ですから、ミニ国連よりリアルになったのでしょうねえ。高校生といえど、シビアに政治を見ています。(笑)

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