2026年5月20日水曜日

書評 吉村昭 『海の祭礼』Ⅱ

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吉村昭 の『海の祭礼』の書評第2回目。利尻島では、アイヌの人々が海鼠(ナマコ)の漁を盛んに行っている頃に、ラナルド・マクドナルドが漂流してくる。(画像参照)海鼠…。まるで漢検1級の問題。(笑)

 このマクドナルド氏は、西海岸のオレゴン州の出身。父親がネイティブ・アメリカンと交易していた関係で、友好関係のために、ネイティブ・アメリカンの大酋長の次女であった母親と結婚した。よって肌の色は白くはない。この母は若くして他界した。その後、ネイティブに対して友好から支配を強める時代となる。父親は、ハーフの彼を東海岸やカナダで学ばせる。しかし、差別は厳然としてあった。富を追求する白人の中で銀行員見習いも務めたが、馴染めず、結局船員となる。それに激怒した父の手紙の中に、buckというネイティブへの蔑称が確認されている。彼は、そういう存在だったのである。

船員となったマクドナルドは、カルカッタから胡椒を積み、リバプールへ向かう。しかし船が、南カリフォルニア沖で、船長を中心に積荷を略奪する場面に出くわした。またその後サンフランシスコからアフリカ西海岸に向かう船に乗ったが、不法な奴隷密貿易船であった。イギリス軍艦が臨検に向かってきた時、逃げられないと判断。黒人たちをイギリス線から見えない航側に板を突き出し全員を海中に突き落とした。

ネイティブの血を引くマクドナルドにとってこれらの体験は大きい。そんな時に日本のことを漂流民の存在から知ったのである。

…アイヌの人々、ネイティブ・アメリカンの悲惨さ、また黒人奴隷の悲劇、そして白人の富を追求する姿。本書の冒頭には、これらの差別的・悲劇的な姿が縦糸・横糸のように編み込まれているという感想をもった次第。

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