2017年5月2日火曜日

北朝鮮有事と難民の話

http://polandball.blog.fc2.com/blog-entry-752.html
英国のサセックス大学の博士課程で難民・移民学を専攻している橋本直子氏が、北朝鮮有事の際の難民について、小論を展開している。なかなか勉強になる内容なので今日はその概要をエントリーしておきたい。

まず、北朝鮮有事の際、日本に大量の難民が押し寄せるか?というと、それほど北朝鮮の難民が来ることは考えにくいが、「質的」に難しいケースも国際法上ありうるということらしい。小論では、シナリオ1:金正恩体制が維持されている場合とシナリオ2:金正恩体制が崩壊した場合で異なるとしている。

シナリオ1で、国内避難民となった北朝鮮の人々は多くは韓国をめざすだろう。だが、一時的に日本に逃れ韓国をめざす難民も少数だがありうる。もし、この中に拉致被害者がいたら、日本政府に保護義務が生まれる。「日本人妻」も、中国の残留孤児と同様に扱われるはずである。一方、日本が米国と北朝鮮の紛争に関して、安保法制によって紛争当事国となった場合、国際人道法(戦時に於ける文民の保護に関するジュネーヴ条約・国際的武力紛争の犠牲者の保護に関するジュネーヴ条約追加議定書)が適用されることになる。日本はこの2条約の締約国(ちなみに北朝鮮も)なので、日本政府は、この条約にそって保護する義務を負っている。もし、紛争が終結した時点で、これらの難民を北朝鮮に送り返すような措置をすると、日本政府が金正恩体制を指示していることになる。

但し、難民の認定は、国際法上、戦争から逃れてきたからではなく、「迫害のおそれ」があるからである。北朝鮮の人々が逃れてきた場合、送還されたら当局に懲罰措置がとられる恐れがあり、それが「迫害」と見なされるからである。

シナリオ2では、金正恩体制が崩壊したという前提である。この時点で、多くの人々が出てくる可能性があるが、同時に非合法出国に対する当局の懲罰措置もなくなる可能性がある。もし、南北統一というような状況になれば、多くの韓国への出国を希望する人々が増える可能性が高い。そうなれば日本政府の国際人道法上の保護の義務が無くなる。在日韓国大使館・総領事館の発給手続きを後押しするというカタチになるだろう。問題なのは、その場合、金体制の側にいた政府高官やそのたぐいの人物がいた場合。彼らは当然韓国に渡ろうとはしない。彼らは加害者として難民条約で難民の定義から除外される。国際刑事裁判所への訴追というカタチで対応されるべきだが、その見極めはかなり難しいとのこと。
…難民問題の専門家として、北朝鮮の人々が日本に来た場合の明確な法的位置づけ、実に興味深い。実際にこのような事が起こらないことを祈りつつ。

http://www.huffingtonpost.jp/naoko-hashimoto/how-should-japan-take-in-possible-korean-refugees_b_16313558.html?utm_hp_ref=japan-world

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