2016年9月10日土曜日

「経済で読み解く明治維新」(前)

このところ読書時間が減っている。忌々しきことである。ブログでも長い間書評を書いていない。スクールホリデーに入ったことでもあるし、久しぶりに最近読み切った「経済で読み解く明治維新」(上念司著/KKベストセラーズ:16年4月20日発行)について書こうかなと思う。

この本の魅力は、教科書に書かれている江戸時代を、経済という視点から見ると、かなりの間違いがあると指摘していることだ。なるほど、と思わせることが多い。私自身は、35年以上社会科の教師をしているが、日本史を教えたことが2回しかない。しかも幕末からである。なのでプロとしては不勉強ではあるが、基本的な知識は一応持っているので、著者の指摘するトコロは大いに納得できる。

江戸時代は、85%が農民で厳しい身分差別と鎖国、そういうイメージであるが、同時に新田開発や商工業の発達が大いに見られるわけで、元禄文化の話など都市の発達も顕著である。一方で、幕府は慢性的な財政難に陥っている。そもそも教科書に書いてあることに疑義をはさむことはタブーなのだが、この本では、教科書の間違いを経済学的に、どんどん正していくのである。

あまり内容をバラすと営業妨害になりそうなので、書評の前編としては、著者が江戸時代を理解するキーワードとして示しある3点を記しておくに止めようと思う。

1.財政構造 徳川家は400万石しかないのに、3000万石の日本全体を収めなければならなかったこと。
2.管理通貨制度 たとえ、瓦礫のごときものなりとも、これに官府の捺印を施し民間に通用せしめならば、すなわち貨幣となるは当然なり。(荻原秀秀が管理通貨制度の本質を見抜いていたことを示すコトバ。幕府には経済オンチが大勢だったが、こういう凄い人物もいたということである。)
3.百姓は農民に非ず 百姓は農民と同義ではなく、たくさんの非農業民を含んでいる。

…なかなか興味深い本なのである。

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