2016年7月28日木曜日

IBTの話(23) ODAと国民性

http://defence.pk/threads/japan-et-al-to-provide-the-philippines-11-3-billion-in-oda-assistance.367845/
総合科目は、このところ、ずっと国際関係を講じている。日本のPKOやODAの話を、マレーシアの生徒に教えているわけだ。すでに、生徒たちには政治の分野で日本国憲法を教えているので、日本のある意味特殊なPKOへの理解は早い。事実上、日本の陸上自衛隊は土木作業に汗を流しているわけで、ほとんどODAでインフラ整備に携わっているのと同じといってよい。穏健なマレーシアの生徒としては、そういう平和主義は十分納得するところだ。

さて、日本のODAの4原則というのがある。人権や自由をないがしろにする国には行わない。核兵器など大量破壊兵器を持つ国には行わない。武器輸出をする国にも、また他国の紛争に大きく関わるような国ににも行わない。というものだ。これも、生徒は納得する。
ところが、実際には、中国、インド、パキスタンなと核保有国に多額のODAを行っている。しかし、これも国際関係。国益と深く関わっているのが現実。そこまで考えさせたい。
生徒に聞いてみた。なぜ中国がODAの総額においてNO1なのか?これは、授業をよく聞いている生徒ならすぐわかる。「(日中国交回復の時に)賠償金を中国は受け取らなかったからです。」「正解。」周恩来は「税金である賠償金をもらえば、日本人民に負担をしいることになる。そんな恨みをかっては、友好は築けない。だから賠償金は辞退する。」と言った。しかし、日本が何もしないわけにはいかない。実に「したたか」である。結局その時に「名」を、長い時間をかけて「実」も取ったわけで、指導者が優秀だと、こうなるわけだ。これも、みんな納得した。
マレーシアが十傑に入ってないのは、すでに中進国でODAは卒業し、今は民間投資が行われていることも教えた。そう、それでいいのだ。(笑)

ところで、日本のODAは、GNIの0.18%だとか。DACでOECDの先進諸国としては0.7%を目標にしているので、まあ少ないテキストは、このことをかなり批判的に記述している。とはいえ、長く世界で一位だったわけで、それはそれで評価できるところである。私自身もODAはもっと増やしていいと思っているが、すでに時代はTICADなどでも民間投資を要請する国が主流になっている。

しかもテキストには経済的インフラが主で、学校や病院などにはあまり支出していないとあった。私は、これは違うと思う。日本のNGOがこれらの分野の国際協力で頑張っている。NGOへの資金協力をするカタチをとっているのだ。これをODAにNGOを合わせて、ODANGO(オダンゴ)と言うのだ、と行ったらウケた。だいぶ日本語がわかるようになってきたように思う。(笑)このODANGOは、2003年にJICAでケニアの教員研修に行った時教えてもらったハナシだ。以来アフリカでそういう現場もいくつも見せてもらった。この辺は、その道の専門家でないと誤った記述をしてしまうと私は思う。テキスト執筆のむつかしいところだ。

さらにこのテキストでは、日本のODAは贈与の無償資金が少なく、借款の有償資金が多いと、いかにもそれがダメなように書かれている。私は、これは日本の勤勉な国民性が生んだものだと思っている。…働かざるもの食うべからず。…無料(ただ)ほど怖いものはない。
マレーシアに4ヶ月いて思うのだが、マレー系の人は、イスラム教徒として喜捨の精神にあふれている。だから「贈与」を好むと思う。先日のマラヤ大学でもALEPSでも無料の食事が出た。華人の生徒に聞くと、やはり少し発想が違う。損得勘定というか競争意識というか、勤勉性というか、その辺は日本と共通する部分もあって、あの無料の食事が出たことは、極めてマレー系的なもののようだ。
そんな話をしていると、日本人の私という第三者が入ることで、当事者の生徒たちがマレーシアの社会構造というか、民族性の違いのようなものを再認識する機会になったようだ。こういう授業は日本にいては絶対できないと思う。私も生徒も実に貴重な体験をしていると思っている。ありがたいことである。、

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