2011年6月26日日曜日

タンザニアのマチンガの話 1

小川さんのHPから マチンガと小川さん
小川さやかさんの『都市を生き抜くための狡知ータンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(3月22日付ブログ参照)を読んでいる。現在で約半分読了した。毎日、400ページほどのハードカバーを持ち歩いている。これが、実に面白いのである。まだ書評とまではいかないが、どんな内容なのか、簡単に説明しておきたい。まあ、中間報告といったところである。
アフリカの都市、特に商業地区には、多くの若者があふれている。ナイロビにも、ハラレにも、そしてワガドゥグにも。彼らは、様々なモノを持って小額にしかならない儲けを求めて行商していたり、露店を開いていたりする。こう言う仕事を、インフォーマルセクターというのである。
アフリカの人々は、農村から都市へ移動することが多い。農業の生産性が低いのが最大の原因だが、『情の経済』という、地縁・血縁による共同体意識を基盤に、農村の実家の食料生産と都市の出稼ぎ者の現金収入にリスクを分散するという生きる知恵でもある。本当は、工業化が進み、安定した雇用があればいいのだが、実際のところはきびしい。そこで、都市に出た若者は日々の糧を得るためになにがしらの現金収入を求めてインフォーマルセクターに滞留するのである。

私は、ブルキナのワガのマルシェ(商業地区)で、Iさんを通じて、インフォーマルセクターにかかわる若者と接したことがある。気のいい連中だった。もし、私がフランス語に堪能なら、もっといろいろな話ができたのにと悔やんでいる。小川さんは、スワヒリ語、それも都市固有のスラングまで駆使してこの本を書いておられる。全く頭が下がるのである。
古着の「梱」
さて、この小川さんのフィールドは、ビクトリア湖沿いのタンザニア第二の都市ムワンザである。ここで、古着商を行う人々を研究したのが本書である。古着商というのは、先進国日本ではよくわかりにくいかもしれない。欧米では教会などが中心になって、もう着なくなった服を援助用に集めている。これらを集め、区分けし、輸出する業者が存在する。かなり価値の高いもの(ビンテージもの:たとえば、日本・大阪のアメリカ村などで売れそうなモノ)をピックアップした後、さらに着ることができないようなボロもピックアップする。ボロは機械用のウエス(油などをふき取る布)にするらしい。で、残りの服を、圧縮して45kg~50kgくらいの梱(bale)としてコンテナ船でアフリカへ運ぶのだ。モンバサやダルスに着いた船から、これらを買い取るのはインド人商人が多いらしい。(ケニアでも儲かる商売はインド系という同様の立場だった。)運ばれてきた梱を中間卸売り商がだいたい3万シリング(日本円で3100円ほど)で買い、小売商に分けるのである。もちろん彼らはアフリカ系の人々である。
*ちなみに、この先進国から古着が途上国へ流れるシステムについては、『あなたのTシャツはどこから来たのかー誰も書かなかったグローバリゼーションの真実』(ピエトラ・リボリ著 東洋経済新聞社)が詳しい。

この梱、だからどんなものが入っているかは、中間卸売り商の運のみである。(もちろんTシャツ、シャツ、スカートというふううに分別されているが、どんな色の、どんな柄の、どんなサイズの…といったことは全くのランダムである。)中間卸売り商は、これをグレード分けする。高く売れそうなグレードA、農村や漁村でしか売れないようなグレードC、その中間がグレードBである。これを、小売商に分けるのである。さあ、ここからが、いよいよ狡知を使ったマチンガ達の世界なのだが、これについては後述したいと思う。

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