2010年9月29日水曜日

国際理解教育Activityの罠Ⅱ

 今日の英語科の地理Aの授業は、MW校の訪問団からそのまま留学生となったJ君を迎えて、中央アフリカの地誌をやった。やはり多く時間をさくのはコンゴ民主共和国(旧ザイール)である。悪名高き失敗国家だが、その歴史もタイガイである。旧ベルギー領だが、国王の狩猟地だったので、植民地経営がされていたわけではない。独立後のコンゴ民主共和国の歴史は鉱産資源の罠、紛争の罠の歴史である。ある意味アフリカの原罪を背負った地域のように感じる。シャバ州を中心に、銅などが産出されるので、世界的にも有名であるが、最近は、携帯電話などに使われるレアメタルの「タンタル」が産出すことで注目を集めているのだ。

 さて、本題に入る。このタンタルの話は、今日の画像の「ケータイの一生」という国際理解教育教材のテキストに出てくる。私もある国際理解教育セミナーで、実際に参加し、テキストも購入した。なかなか面白い視点で「ケータイ」を見て行く。ケータイクイズや何年で買い替えるかなど、身近で生徒の興味を引き付ける。ケータイの中身から、その部品が、いかにグローバルなかたちで日本に来ているかという視点も面白い。で、このタンタルの話が出てくるのである。このタンタルの産出されるあたり、非常に危険な反政府地域である。ここのレントの多くがそういうゲリラに流れ、武器購入などの費用となり紛争を助長しているということは、厳然とした事実である。

 この事実を受けて、このテキストでは、ワークショップでこう問いかける。「それでも、あなたはケータイを買い変えますか?」私が参加した時、教員や一般の社会人が多かった。5~6人のグループで話し合いを持った。その中で、直情型の青年がいて、「私は以後携帯を買いません。」と毅然として言い張るのである。この事実を聞いただけで、彼は決めつけたのだ。国際理解教育のアクティビティの罠に見事にかかっている。彼は、他の意見を完全に否定し、聞こうともしない。幸い、その時のファシリテーターはJICA大阪で昔馴染みの元職員さんで、「様々な意見があっていいんですよ。」と諭してくれたのだが、私は一気に、このアクティビティに興ざめしてしまった。

 最近日本企業は、タンタルの輸入先をオーストラリアに移しているし、何より、コンゴ紛争の真の原因は、やはりガバナンスの悪さからくる開発政策の無さによる貧困であり、我々がコンゴ産のタンタルの入ったケータイを買うからではない。このような問題は、他の地域や他の鉱産資源でもありうることだし、かなり馬鹿げた問いかけであると私は思う。(ちなみに本校で、このアクティビティを試し、同じ質問をしてみたが、誰一人そんな馬鹿な結論を出す生徒はいなかった。何故なら、開発経済学の基礎を教えた上で、このような質問しているからである。)
 余談であるが、このテキスト、後半部は途上国に進出した先進国(日本)の工場が、公害を出したり、安価で危険な労働を強制していることを前提にしたロールプレイなどが出てくる。私は、こういうシチュエーションを元に国際理解教育をやりたくない。いかにも正義を振りかざすようで好きではない。現実はもっとシビアである。以前(2月26日付)書いた国際理解教育のActivityの罠で記したように、社会科学的な裏付けもなしに、勝手に「決めつけ」る危険性を持っている。授業でタンタルの話をしていて、こんなことをフト思い出したのだった。

 私は、J君に言った。「今、日本の携帯電話会社はオーストラリアから、タンタルを買っているよ。」彼は、ニコッと笑い、親指を立てたのだった。 

2 件のコメント:

  1. 「科学」とか「疑う」ことをしない人は大学にも多いです。
    一番わかりやすいのが血液型の話しwあとは風邪の予防にマスクとか!

    この辺はとりわけ害がないので笑いごとで済まされますが、人権問題からスタートするようなカカオやコーヒー豆の不買運動であるとかになると、生産者の生活に打撃を与えるだけですから困ったものですね。本当にいいことをする時には「正義」という言葉を声高に言う必要がないわけですから、「正義」という言葉が出てきたら極めて怪しいですね。



     

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  2. 哲平さんへ。私はどうも、フェアトレードとか、フードマイレージとかも、どうも納得がいきません。生徒には一応教えますが、精神的な部分ではともかく、それを実際に行うことについては、非常に様々な問題が生まれます。一面をもって真理だというのはオカシイと思います。なんか知がデジタル化してますよねえ。

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