2023年1月4日水曜日

アメリカの教会 序論

ウェストファリア条約 https://muuseo.com/12514753/items/1
橋爪大三郎氏の「アメリカの教会 キリスト教国家の歴史と本質」(光文社新書)のエントリーを続けたい。まず序論として、ヨーロッパとアメリカのキリスト教会の相違について整理しておく。ヨーロッパでは、三十年戦争後のウェストファリア条約(1648年)で「住民の信仰は君主の信仰と一致すべき」と決められた。よって国や地域によって、1つの教会しかなく、教会を選ぶ習慣がない。カトリックの国々(イタリア・スペイン・ポルトガル・アイルランド、ベルギー、そしてフランスなど)はもちろん、ルター派の北欧やドイツ(北部地方)、カルヴァン派のオランダやスイスなどは、教会が固定されている。

新大陸にはウェストファリア条約は適用されない。とはいえ、スペイン(フロリダや西岸の一部)やフランス(ルイジアナやカナダ)の植民地ではカトリックが、唯一の教会であった。カトリックの教会は、人々が自由に設立することはできない。教会は一種類しかない。(=普遍教会)その費用は、教会税と献金で賄われる。(ちなみに、ルター派も、唯一の教会=公定教会で、政府が税を徴収し、教会を維持し牧師の給料を支払うので政教分離ではない。)

後からイングランドが北米に植民地を経営したが、国王が特許状を発行して、個人や法人に任せるという方法を取った。イングランドには、英国国教会(唯一合法的な教会で、英国国王と結びつきがある故に、人々が自由に設立することはできない。)があるが、入植が始まった17世紀は、清教徒革命や名誉革命があり、政権交代のたびに宗教政策がガラリと変わるような状況で、政府は特許状を与えた植民地の教会のことに、いちいちかまっておれなかったらしく、合法的な国教会でなくても片目をつぶらざるをを得なかった。故に、信仰の自由を求めて新大陸に渡る人々が現れたのである。かの伝説的なピグリム・ファーザーズは、ピューリタンの中の、国教会を飛び出した「分離派」であった。

アメリカに、現在多くのプロテスタントの宗派が存在する理由は、以上のとおりである。アメリカの教会が元気なのは、自由だからである。アメリカの教会は任意団体で互いに競争している。アメリカの人々は伝統的に、自分の進行だけは譲らない。すなわち自分の良心だけは譲らない。これがアメリカの個人主義の出発点となっている。

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