2023年1月23日月曜日

マルクスガブリエル 新実在論

マルクス・ガブリエルは、20世紀末のポスト構造主義(フーコーやドゥルーズ、デリダなどのフランス哲学)やポストモダン(分析哲学や文化相対主義)に対して、強い批判を行ったドイツの哲学者で、デリダまどの大御所が不在となった21世紀に彗星のごとく現れた。彼は、概念や言語に基づいて世界を理解するという「構築主義」(広い意味で観念論)に対して、反観念論という形の実在論、「新実在論」というスタイルをとる。彼が一躍注目を浴びたのは、『なぜ世界は存在しないのか』という奇妙なタイトルの本からである。

この本の中で、彼は、世界の定義を、宇宙よりもずっと大きい極限的な概念とした。存在するとか存在しないとか言うときに、彼は「意味」という概念を非常に重視する。どのような意味の場に存在するのか、これを意味領域と読んだ。例えば、ユニコーンは存在するか否かという問いに対して、神話には存在し、物理的には存在しない。意味領域が異なるのである。夢の中で存在する、空想の中で存在するというのも同様で、彼によると、全てのものは存在することになる。しかし、世界は存在しない。矛盾しているようだが、「XはYという意味領域の中に存在する」という文法に則ると、「世界はYという意味領域の中に存在する」となり、Yは世界より大きくなってしまう。最大概念である世界を超えるYという意味領域はありえない故に、世界は存在しないことになる。これが奇妙なタイトルの謎解きである。

この全てが実在する新実在論の意味は、デネットらの科学哲学=自然主義への批判である。ドイツ人であるマルクス・ガブリエルは、ナチスの優生学などで陰電子操作や生命操作をしたことへの批判から生まれたドイツの良心を持ち、遺伝子操作などには厳しい態度を取る。アンドロイドやロボットなどへも非常に強い批判があり、英米系の科学哲学に対抗し、ドイツ哲学の地位向上を目指しているようである。(たしかに昔は哲学といえば、ドイツだったが、それがフランスに移り、さらに英米に主流が移っている。)人間の心や精神、自由、道徳性など、哲学を科学の上位に復活させよう、世界のあり方は科学ではなく哲学でしか理解できない、としているわけである。

…現代哲学者10人のトップに描かれたマルクス・ガブリエル、ブログでは、ローティ、デネットをまずエントリーした。これは、分析哲学や科学哲学(自然主義)を先に整理しておいた方が彼の思想がわかりやすいと思ったからである。次回は、今日、市立図書館で借りてきた同じ著者の『答えのない世界に立ち向かう哲学講座』から、今回のブログの5行目にある「文化相対主義」についてエントリーしようと思っている。

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