2023年1月15日日曜日

独立後の神学論争

https://www.5star-magazine.com/news/thomasjefferson/
「アメリカの教会 キリスト教国家の歴史と本質」のエントリーの第15 回目。アメリカが独立し、宗教の自由を宣言したおかげで、カトリックは恩恵を受けた。ワシントン大統領はRIのニューポートのシナゴーグを訪れユダヤ教徒の礼拝の自由を保証した。合衆国憲法修正第1条で、ヨーロッパ型の公正宗教も、少数派の法的能力を奪うこともやめた。このため、アメリカの各教会では、信者獲得が自由競争となり、神学論争が活発になった。論争の焦点は、聖書、カルヴァン派、聖餐式の3つだった。

聖書:アメリカのプロテスタントは、カトリックをアンチ・キリストと考え、聖書に基づく信仰を追求してきた。「理神論」はイエスの言葉の中に、後世の信条(教会が積み上げた人間の考え)のゴミに埋もれた黄金があると考えた。第3代大統領のトマス・ジェファーソン(画像参照)は、理神論に共感する「ユニタリアン」で、イエスについて後世語られたこと(復活やパウロの手紙)には基づかない。三位一体論をとらず、イエスは神(の子)ではなく、イエスの超越的な力は神から与えられたもの、とする。同じユニタリアンのハーヴァード大学のジョージ・ラバル・ノイズ教授は、ヨハネの手紙1の5章7節(三位一体の根拠となる文書:「証とするものが3つある」)を後世の加筆だとした。これに、イェール大学で会衆派が反論する。「聖書にイエスが神で人間だ」と。それに対し「神が人間に与えた理性を使わないのか」とユニタリアンは答えた。ユニタリアンは、19世紀に宗派(会衆派のうちのリベラル寄りの人々で、つまりは会衆派かた離れたといえる。)となった。それまでは、「論」である。ロックやヒュームは、神を合理的な創造者として再構成することについて議論していたという。かの秘密結社として有名なフリーメイソンもオカルト的ではあるものの理神論である。理神論は、福音主義的な信仰復興(リバイバル:覚醒運動)の対局にあり、市民運動を信じ、科学を信じる。回心を信じない。カルヴァン派の人間学にも反対する。彼らのリベラルさとその広がりは、政府と教会の分離(政教分離)を推進した。

カルヴァン派:1647年の「ウェストミンスター信仰告白」(前述:1月5日付ブログ参照)は美しく理路整然としていて、ごく僅かに手を加えただけで、会衆派、長老派、多くのバプティストに受け入れられていた。人間は生まれながらに呪われている。神は人々のごく一部を救う。残りの人々は神の正義のため破滅する。神が一部の人を選んだことが、恩恵のみの教義なのであり、恩恵は神のわざだから人間の出番はない、と。カルヴァン派の議論では、1.原罪、2.意思の束縛、3.無条件の選びが問題となった。
1.原罪について、ユニタリアンは聖書にそんなことは書いていない。カルヴァン派の考えによれば、神が人間の罪を作り出したことになると批判した。さらに、ユニタリアンは、慈悲深い神は、人間を神の道徳的イメージに合わせてつくった。人間は道徳的に正しくふるまう能力があり、神はその自由と能力を与えたと主張した。新しい国家のスタートとしてふさわしい清新な思想である。
2.自由意志について、カルヴァン派は人間には罪を犯す自由しかないので悲しすぎる運命論である。会衆派のニューイングランド神学では、自然の能力によれば人間はキリストに従う。だが、道徳に従えば罪を犯すとしたが、いやいや神の働きで回心し罪は拭い去られるという論争が起こった。長老派内でも同様の論争があった。第二次覚醒(1800年~40年頃)にかけ、この人間の自由意志と神の決定権の問題は語られ続ける。
3.無定条件の選びとは、救済予定説に関わる論争で、「無条件:神の意志のみ」のカルヴァン派と「条件付き:人間の信仰による」のアルミテウス派(=メソジスト)との論争である。メソジスト側からは、もし無条件の救済予定説ならば、キリストを「偽善者」に、パウロを「嘘つき」にしてしまうと批判した。パウロは、デモテ2章で「すべての人は救われる」と述べているからである。カルヴァン派(大まかに言えばピューリタンの会衆派・ブレスピテリアンやゴイセン、スイスなどの長老派)は「誰でも来なさい」というイエスの福音を否定しているというわけである。はアメリカのプロテスタントは、カルヴァン派が中心であったが、1776年時、人口の3%だったメソジストが、1850年には34%に増えている。勢いは「条件付き」にあったといえる。

聖餐式:国教会が中世以来の装飾や儀式を復活させようとした、本国と連動したオックスフォード運動と呼ばれるもので、ルター派は反対にアメリカ化しようとした運動が起こった。ユダヤ教でも食物規定の緩和やヘブライ語の祈祷書の英訳などの動きが起こった。

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