2020年12月8日火曜日

書評 世界を動かすイスラエル

先日購入した「世界を動かすイスラエル」(澤畑剛/NHK出版新書)を読んでいる。中東情勢が大きく変化した。これまでのアラブ VS イスラエルという構図が、アラブ+イスラエル VS イランに変化してきたからである。特にサウジは、アラブの春で大きな影響を受けなかったように見えるが、実は$370憶もの大量のバラマキで反政府活動(二級市民化されていたシーア派の若者)を抑えた。湾岸諸国も同様である。ちょうど原油価格が高騰していた時で助かったわけだが、シリア内戦ではシーア派に苦杯をなめている。さらにサウジの裏庭のイエメンでの影響力が低下している。(スンニー派とシーア派の比率は、世界全体では9:1だが、中東では5:5になる。実にやっかいだ。)兄貴分のサウジの国力低下は弟分の湾岸諸国にも大きな影響を与えている。

そんな状況下、サウジや湾岸諸国は、イランのサーバー攻撃に脅威を感じているようだ。イスラエルは、アメリカの承認を受けた国にサイバーセキュリティーを売り込んでいる。今やサウジや湾岸諸国は超お得意様になっている。イスラエルは、これまでの戦争経験から、自国で軍事技術を開発してきた。民間転用も成功している。たとえば、日本の医療現場でも使われている「カプセル内視鏡」。飲み込むだけで小腸や大腸の精密な検査が可能になった。もとはミサイルの精密誘導の技術だったらしい。以前読んだ「知立国家イスラエル」にあるように、軍と民間企業は密接な関係を持っているのである。

https://zapzapjp.com/40681397.html
面白かったのは、「アイアンドーム」(イスラエルの防衛システム)の技術が点滴農業の技術に応用されているという箇所だった。息子がまだイェルサレムにいた時、ガザからロケット弾がガンガン発射されていたが、イスラエルにはアイアンドームがあって安心だった。。アイアンドームは、住宅地に着弾するもののみを選別し迎撃する。この間約20秒。600発のロケット弾が撃ち込まれたが、住宅に被弾したのは1発だけである。このビッグデータを処理する能力は、デジタル農業で最も最適な水量・肥料の量を瞬時に解析し、自動供給するのに役立っているそうだ。サウジや湾岸諸国も砂漠を緑化する、この技術を欲している。

今回のアメリカ大統領選挙の逆デモクレイジーでも、もしかしたらイスラエルのテクノロジーが一役買っているかもしれない。

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