2020年8月17日月曜日

イスラエルとUAE国交樹立

これまで、イスラエルと国交のあるアラブの国は、エジプトとヨルダンだかだったが、米大統領の仲介でUAEとも国交を結ぶこととなった。4度の戦火を交えたアラブの大義は、アラブの春以来揺らいでいる。これは実に大きなニュースだと私は思う。マレーシアにいた時、ムスリムの学生たちは、声をそろえてイスラエルには批判的であった。(もちろんマレーシアは国交を結んでいない。)だが、一般人の意識はともかく、国家間政治の世界ではパレスチナ人を巡る大義は、これで大きく変化していくと思う。湾岸諸国が後に続く可能性が高いのだ。

イスラエルの話となれば、オリーブ山通信が最も詳しい。UAEにとっては、ユダヤ教国家のイスラエルより、ペルシャ湾を挟んだシーア派のイランの方が危険だと見ているようだ。これは、アメリカとイスラエルにとって大きな橋頭堡を得たことにになる。
https://mtolive.net/

ところで、この国交樹立の条件としてUAEが掲げたのは、イスラエル右派が進めるヨルダン川西岸への入植地(地域の30%を占める)をイスラエル主権下に置くこと、残り70%をパレスチナの主権下(要するに独立を認める)というネタニヤフが主唱してきた「合併案」の「棚上げ」である。

当然、この合併案にはパレスチナ自治政府はNOが1000回というくらい否定している。またイスラエル国内の右派はパレスチナの独立を認めたくないし、左派は一方的な合併に否定的で、ネタニヤフ首相としては、今回のUAEの棚上げ提案は、「渡りに船」だったようだ。UAEと国交樹立の裏には、このような話があったようだ。あくまでこの合併案は棚上げされたわけで、消えてなくたったわけではない。実に玉虫色である。

いつか記したが、エゼキエル書(旧約聖書の三大預言書の1つ)38章には、ゴグ=北(ロシア・イラン・トルコなど)から、そしてマゴグ=南(北アフリカ方面)からイスラエルへの攻撃があると記されている。シェバ・デタンという参戦しない地域は、エジプト、ヨルダン、今回のUAEを含むアラビア半島を意味しているようだ。預言書のままに歴史は動いているという事か。

ところで、シリアはエゼキエル書のゴクにあたると思われるが、UAEはシリアとも外交関係を修復し、復興事業にも参入していたのだが、2019年12月に発動されたシーザー法(シリアのアサド大統領など39の個人・団体への制裁を定めたもの)で、アメリカの制裁を受けるかもしれないという窮地に立った。今回のイスラエルとの国交樹立が(シーザー法の)免罪符になるのかもしれないという報道もある。UAEにはUAEの裏事情もあったわけだ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/08/uae-6_1.php

中東の政治は様々な要素が絡み合っている。これが国際政治というものだ。単純にUAEがアメリカの対中国・イラン包囲網に組み入れらたと見るのは、ちょっと違うわけだ。

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