2018年10月28日日曜日

在馬インド人の視点を探る 7

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一番下がタミル語の立入り禁止
「多民族国家マレーシアの国民統合-インド人の周辺化問題」、いよいよ佳境である。マラヤ連邦独立、5.13事件、そして、ラーマン以後のブミプトラ政策によって、人口の1割弱のインド系マレーシア人は、その政治力の弱さ故に周辺に追いやられていく。

第5章では、まず教育問題について触れられている。国民国家として、共通の国民意識形成のため、マレー語を国語(英語は公用語)とする政策が取られた。

これに対し、中華系は(中国語教育を認めるように)猛反対するが、インド系は、それほどではなかった。この理由は、中華系は都市にあろうと地方にあろうと、出身(広東とか福建とか客家等)が異なろうとマンダリン(北京語)を共通言語とすることができた。いわば、言語は、民族的アイデンティティなのである。

ところが、インド系の主言語・タミル語は、インドのローカル言語にすぎず、都市住民の北インド系の多くは英語を使用していた。ここでも、インド系マレーシア人の構造が露呈する。地方のエステートのタミル語の学校の存続自体が、タミル語の教員不足できびしくなり、しかも中等教育以降はマレー語に移行しなくてはならない、というわけで進学をあきらめる者も増加し、これはタミル系の子供の学習機会を奪うことになった。一方、都市の方では、英語で授業を受けるためには私立の学校に行かねばならず、その後は英語圏へ留学するしかなくなったのである。これらに対し、MICは無力であった。

1990年代に入り、マレー語・英語の2言語体制へと転換した、非ブミプトラに対しては、中国語・タミル語の3言語体制が取られるようになった。とはいえ、都市部ではタミル語の能力が低下しているようである。英語が出来れば、中国系・マレー人とビジネスが出来るし、マレー語はマレー人との会話程度で十分、タミル語も宗教的儀式など以外は、会話程度で十分というわけだ。地方のエステートの人々はタミル語で、少しマレー語が出来る程度。と、なれば就職機会も制限されてしまう。

しかしながら、インド系は、黙っている。ブミプトラ政策は、自分たちに不利だが、国全体が豊かになることで、その恩恵を自分たちも受けることが可能なことを彼らはわきまえているようである。…まさに周辺化である。

…この本が書かれたのは2000年である。2018年の今、KLで出会うインド系は実に多彩だ。彼らの英語(主にタクシー運転手やバス友)は、マレー系や中華系より訛りが少ないのでわかりやすいのは事実。おそらく、タミル系の人々も都市化の波に押されてきているように思う。エステートの労働は外国人労働者に取って代わられた可能性が高い。

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