2018年9月29日土曜日

イスラーム世界の女性たち

日本人会の無人古書コーナーで「イスラーム世界の女性たち」(白州英子著/文春文庫)を手に入れた。イスラムの「学び」の一環として読んだ。イスラム教においては、一般的に男尊女卑的であるという常識があるが、それは違うというのがこの本の表のスタンスである。私は、クルアーンにある様々な規定が女性を護るという視点にあることを知っている。しかしながら、裏もある。エジプトやサウジでの取材における女性差別の実態も書かれている。したがって、本書は、多方面の視点からイスラムの女性像を描いた価値の高い本であると思う。

シャーフィイー派のマレーシアにあって、女性差別をあまり実感することはない。ヒジャブ(髪を隠すスカーフ)は、オシャレの重要なアイテムになっているし、妻が病気だと会社を休むほど男性は優しい。車の運転も自由だし、当然選挙権もある。特に地位が高く豊かな人以外の多くは、一夫一婦制である。

しかし、それはマレーシアのことであって、当然ながら、広大なイスラム圏では差がある。この本の中で、「プリンセス3部作」の話が出てくる。これを読むと、サウジの王家に於ける男尊女卑の実態が見えてくる。これも、アラブ文化が根底にあるように私は感じた。好戦的な遊牧民の世界では、女性を護るのが男性の絶対的な勤めであり、この意識・プライドが、女性を所有物と見る男尊女卑の習慣に大きく飛躍しているようだ。そもそも、欧米の人権意識も世界史的に見れば最近になって、男女平等を普遍的なものだと謳っているに過ぎない。そう考えれば、近代いや現代以前は、イスラムの方がはるかに平等であったといえる。

…来年は、マレー系国費生の文系の学生を教えることになると思う。再度、マレーシアのイスラムについて勉強しておこうと思うのだ。

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