2018年1月15日月曜日

PBTの話(5)マレーシア経済考

国費文系クラスで、いよいよ最終講義に入った。三菱UFJ銀行の最新のリサーチのレポートをもとに、マレーシア経済の現状と問題について考えていくという、極めて大学っぽい講義である。

今年の国費生は、意外と人文系への進学希望が多く、経済学部や経営学部、政策関係・国際関係が少ない。とはいえ、マレーシア政府の税金で日本留学するわけであるから、マレーシア経済の現状を理解しておくことは極めて当然であり、その使命から言っても知っておくべきことだと私は思ったのだ。当然ながら、このレポートの日本語はかなり難解である。今日のエントリーは、最初に提示されている要約を記すことにしたい。

1.マレーシア経済はこのところ5%前後の経済成長率で堅調である。1990年代前半までは、主に電気製品の輸出が牽引してきたが、現在は個人消費の拡大に支えられている。
2.この個人消費については、家計債務残高が増加し、中央銀行によって半数の住宅ローン申請の却下という事態が見られる。乗用車の新車販売台数も昨年は減少した。
3.マレーシアの物価は他のASEAN諸国に比べ安定しているが、金融当局は、インフレよりもリンギ安を強く警戒しているようである。2016年12月に輸出産業の代金については75%をリンギ支払いとするなどの措置をとってリンギ安を警戒している。外国企業は為替リスクのヘッジがしにくくなったとの声がある。
4.マレーシアの財政赤字の対GDP比は近隣諸国に比べて高い。その理由は、石油・天然ガスの価格低下、天然ガスの日本への輸出減少(1/3になっている。)などの要因で、国営企業ペトロナスの収益が減り、=国庫収入の減少となっていること、中進国の罠を抜け出すためのインフラ整備で歳出増になっているためであるが、政府は健全化をはかっており、その憂慮は比較的小さい。国債も対GDP比で近隣諸国より多く発行されているが、外貨の保有も十分であるので、ほぼ問題はない。
5.現在のマレーシアの輸出の最大品目は、集積回路であり、主な輸出先は中国である。マレーシアの為替政策は、中国の元と同様の動きを見せており、対中国に配慮している。
6.マレーシアの経常収支は減少傾向にある。最大の理由は、パーム油の価格低下、天然ガスや石油関連の輸出減少による。
7.マレーシアの1人あたりの名目GDPは$1万に近づいており、OECD加盟国であるメキシコを抜いているが、所得水準が上がり、これまでの低コスト生産の強みは消えかけている。成長戦略としては、イスラム金融やハラル認証と言ったイスラム関連ビジネスへの移行が有望視されている。

と、こんな話を学生と共に読み、解説している。私自身も今まで接したことのない経済学用語が出てきたりするので、実に勉強になっている次第。

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