2018年1月21日日曜日

マレーシアのリンギ高政策

最近のマレーシア・リンギと日本円の推移
http://myr.jp.fxexchangerate.com/jpy-2017_10_13-exchange-rates-history.html
先日、国費生の文系の授業でマレーシア経済の現況について講じているというエントリーをした。この中で、「マレーシアの金融当局は、インフレよりもリンギ安を強く警戒していること。2016年12月に輸出産業の代金については75%をリンギ支払いとするなどの措置をとってリンギ安を警戒していること。外国企業は為替リスクのヘッジがしにくくなったとの声があること。」について、もう少し詳しくエントリーしたい。

この輸出産業の75%の(マレーシアの通貨である)リンギ支払いというのは、なかなか凄いというか凄みのある政策である。輸出する企業はリンギを買う必要に迫られる。すなわち、リンギの価値が高くなり、リンギ高を招く。これは道理であろう。金融当局は、なによりリンギ安を警戒しているわけだ。これは、アジア通貨危機でかなり痛い目にあったトラウマのような気がする。当時のマハティール首相は、IMFの融資を断り、マレーシアの独力でこの危機を脱した。欧米のファンドなどに、血と汗で築いたマレーシア経済をおもちゃにされてたまるかという強い意志がそこにある。以来、リンギは、紆余曲折するけれど、バスケット制を取り入れて安定した通貨となっているようだ。

国費生で経済学部に進むF君が授業の後質問に来た。「この政策は正しいのですか?」私は、「それは歴史が判断するんじゃないかな。」と答えたのだった。文学部出身の私にそのような高度な判断は出来ないし、経済学は社会科学であるから、絶対的・普遍的な「正解」と呼べる経済政策はないと私は思っている。何事にもメリット・デメリットがある。エコノミストでも、自分の見解は出せても、絶対的・普遍的に「正解」だとは言えないだろう。
また、私のクラスの私費生で、S大学の経済学部合格が決まっているK君は「マレーシアは社会主義国ですよねえ。」と感想を述べた。(彼はビザの関係で投稿していたので、せっかくだからプリントを渡し解説していたのだった。)私は、大笑いしたのだが、確かにそういう側面も否定できない。未だ開発独裁的な部分を残していることは確かだ。
さて、現場の日本企業(東証一部上場企業である)で重要な立場にいる友人にこの75%の件を聞いてみた。彼の見解は、大変好意的なモノだった。いわく「良い政策だと思いますよ。」おおお。簡単に言ってのけたのにはビックリした。詳しく理由を聞いたわけではないのだが、マレーシアのリンギが安定していることはそれだけ重要なことであることだけは確かだということが解った。うーん、経済学は奥が深い。まだまだ勉強が全然足りない…。

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