2017年11月17日金曜日

帝国の復興と啓蒙の未来(4)

http://islamchapter13.weebly.com/dar-al-islam-and-treatment-of-women-in-islam.html
帝国の復興と啓蒙の未来、さらに備忘録の続きである。ダール・イスラームについてのエントリー。イスラームは、全人口の8~9割を占めるスンナ(スンニ-)派、1~2割のシーア派に大別されるが、シーア派の9割を占める12イマーム派、その他のザイド派、シスマイール派、さらに300万人弱のハワリージュ派(アリーに反旗を翻し粉砕され、分裂を繰り返し、他宗派を異端視して殺害する狂信カルトともいうべき宗派だが、イスラームには正統教義を決める資格のある聖職者制度を設けることもなく、カリフが教学に介入し正統教義を定めなかったので、排斥されていない。)の流れを引くイバード派、さらにはイスラームの一派か否か曖昧なアラウィー派(例のシリアのアサド大統領が信仰する少数派)、ドルーズ派(イスラエルに行ったとき、その寺院に入ったことがある。)などの分派が存在する。ウンマ内で分派が特に殺し合いに至る争いを繰り返しながらも、ついに1000年以上にわたって一度も内包(教義)と外延(メンバーシップ)を公式に制度化して、どれか一つを正統としてそれ以外の諸派を排斥することもなく、「不可視的教会」として存在してきた。

キリスト教世界に対応する概念としては、「ダール・イスラーム」という概念がある。イスラームの世界観では、宇宙の創造心アッラーは天と地の主であり、主権はアッラーのみにあり、大地は全てアッラーに属する。領域国民国家という地球の分割という発想はない。地球の主権は神にあり、神授の天啓法シャリーアを世界の隅々まで施行することが人間の義務とされる。そこで、イスラーム法学では、ムスリムが支配しイスラム法によって統治されている法治空間を「ダール・イスラーム」とし、異教徒が「不法」に治めている「ダール・ハルク」(戦争の家)に二分する。このダール・イスラームを弘める義務をジハードと呼ぶのである。ジハードの規定において、ムスリムはダール・ハルクの住民にムスリムと成るか、ジズヤ(税金)を治め生命・財産・名誉の安全を保障されるズィンミー(庇護民)として、その居住地をダール・イスラームに編入するように呼びかける。

この庇護民となれるのは、キリスト教徒・ユダヤ教徒・ゾロアスター教徒のみとする学説と、全ての異教徒とする学説があるそうだ。(フィクフの本にもそのあたりが詳しく書かれている。またいずれエントリーしたい。)このダール・イスラーム、ダールハルクという大別は、スンニー派もシーア派も同様である。重要なのは、キリスト教世界には、異教徒の存在は想定されていない。イスラームでは、異教徒との共生が前提になっている。ジハードの目的は、あくまでイスラーム法の法治空間/ダール・イスラームの拡大であると中田氏は説いている。このキリスト教の排他的な信徒組織とイスラームの異教徒を支配下に置く都市国家の「国教」であるという相違が、文明としての西欧文明とイスラーム文明の相違を生み出したというわけだ。…なるほど。

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