2016年2月24日水曜日

日経 不透明感増す中国経済

https://jcvisa.info/li_keqiang_index
日経の経済教室では、昨日から「不透明感増す中国経済」と題して中国経済の考察が行われている。今日は、巌善平(げん・ぜんへい)同志社大学教授の「中高速成長の可能性なお」という、中国経済の可能性を説いたものであった。その内容は概して次のようなものである。

中国政府は、状況変化(経済成長の減速)を「新常態」(ニューノーマル)ととらえ、制度改革やイノベーションにより持続的成長の実現に自信をもっているようである。五中全会で「第13次五ヵ年計画」の大枠が決定された。20年のGDPおよび1人あたりの所得を倍増する目標(年平均実質経済成長率6.5%以上)が示された。米の利上げ、原油価格暴落、日欧の経済失速などのグローバルな問題だけでなく、国内的には、労働人口が減少、不動産バブルの崩壊、人民元安などの問題も抱えている。

中国の1人当たりのGDPは15年に約$8000に達した。世銀が定義した中所得国の上位層に属する。高所得国の入口は$12000で、大きな距離がある。20世紀後半以後に中所得国から高所得国入りした日本や韓国は非常に稀なケースで、中南米諸国のように中所得国の罠に陥る場合の方がはるかに多い。

ここで、現在の中国経済の構造変化を見てみると、第一に、就業人口では99年、GDPでは13年に第三次産業が第二次産業を上回った。第二に、15歳~64歳人口比率の上昇により経済成長が促されるという人口ボーナスは、早くも「人口オーナス」(重荷)に変化した。第三に、農村から無尽蔵に供給された安価な労働力は、21世紀に入って増加速度を落とし、中国経済は労働力の供給が一巡する「ルイスの転換点」を通過した。第四に、都市と農村間の経済格差が所得水準の向上とともに、拡大→横ばい→縮小という「クズネッツの逆U字型」を示している。所得格差は09年の3.33倍をピークに下がり、14年には2.93倍になった。ジニ係数も、08年の0.491をピークに、14年には0.469に低下した。

中国経済の難問としては、第一にリーマンショック後、最終消費・家計消費のGDP比が下がり、投資主導の成長モデルが形成され、鉄鋼・セメントなどの生産能力が過剰となっていること。第二に、暮らす都市の戸籍を取得できずにいる農民工の存在は大きい。GDPに占める非農業部門は9割もある。だが、非農業部門就業者は全人口比7割、都市部の人口は5割(その2/3は農民工)である。この農民工への戸籍差別のため、都市化が遅れ、労働資源の有効利用や家計消費の拡大を大きな負の影響を与えている。第三に、所得格差は縮小してきてはいるが、地域間、階層間、都市と農村の格差の絶対的水準は依然大きい。第四に金融、電力、石油、鉄道、通信などの国有企業の存在が、大きな負担になっている。

5中全会では、これらの問題を踏まえ、1:安い労働を武器とした成長モデルからの脱皮。2:高速鉄道・原子力産業・造船・航空宇宙などを支援、鉄鋼やセメントはAIIBの支援で消化する。3:北京・上海などのメガ都市以外で戸籍の転出入を自由化する。4:商業・サービス税を廃止し、付加価値税を導入して第3次産業の成長を促進。などの政策をうつことが決定された。潜在的可能性は十分である、というのが、巌氏の立場だ。

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