2012年4月21日土曜日

京大 DE エチオピアコーヒー

前から楽しみにしていた「日本ナイル・エチオピア学会創立20周年記念 公開シンポジウム」に、妻と一緒に行ってきた。『エチオピアのコーヒーをたのしむ』と題されて、学会の方と私たちのような一般人も参加してのシンポジウムだった。会場の後方半分は、パネル展示やコーヒー関係、エンセ―テ関係の展示になっていたこともあって、一般の参加が多かったのか、最初から満員御礼状態だった。

”Coffeagraphy”という写真で見るコーヒーのプレゼンテーションで開会した。語りは、いつも挨拶してくれる中村さんだ。彼女の研究地域もエチオピアだったはず。重田先生の挨拶、駐日エチオピア大使の祝辞と続いた。大使もエチオピアの大学で教えていた学者さんらしい。この学会の会員でもあるそうだ。そういうことに、私などは素直に感激するのだ。さらにこの学会を古くから支援してきた企業の会長さんの祝辞もあった。若い研究者を支援されているらしい。うちの息子も、今は国の支援で研究者生活をしており、今度は某企業の奨学資金の選考にエントリーしているらしいことを妻から聞いたばかりだ。こういう人文系の研究は、大体カネにならない。ありがたいことだよなあと、これまた私は素直に感激するのである。

さて、セレモニーに続いてアジスアベバ大学の先生の『遺伝学からみたコーヒー』という講演があった。当然英語でのプレゼンテーションである。アムハラ語なまりの英語。いいよなあ。レジュメも英語なのだが、スクリーンに日本語版と講演内容の趣旨が映されるのでなんとか理解できる。ただいつもの公開講座のようにはいかない。ただ気になった言葉が出てきた。「前適応」という生物学の言葉である。「コーヒーはエチオピアからの贈り物」と言われ、原産地として有名だが、このエチオピア原産のアラビカは、他のコーヒー種と異なり、二倍体から四倍体になったそうで、その要因として使われた言葉だ。調べてみて、なんとなく理解したような、していないような。完全文系の私には難解だ。まあ、「コーヒー=エチオピア原産」ということを、証明する講演だったのだと思う。(間違っていたらスミマセン。)

休憩では、コーヒーセレモニーの実演もあった。私は毎回公開講座でごちそうになっている。コーヒーにうるさい妻に言わせれば、かなり濃いそうだ。後味はかなりいいとのことだった。(笑)申し訳ないが私は、とにかくコーヒーだったら嬉しいので…。

後半は若手の伊藤義将(京大アフリカ地域研究資料センター研究員)さんの、「森のコーヒー」という発表。内容を概説すると、エチオピアの南政部の高原地帯、1300mから1800mの標高の湿潤山地林(年間降水量1500mm~1800mm、年平均気温20℃~26℃、年間最低気温4℃、最高気温40℃)でコーヒーは生育するという。現在エチオピアのコーヒー生産の50%は、私有地である「森」で収穫されているということである。コーヒー農家が、植えたものではなく、自然にある野生の『森のコーヒー』であるという点が面白い。この森に、所有者の家族、所有者の親戚を中心に、村の友人や全く無関係の周辺地域から集まってくる若者たちが、ルールに従って採集するのだという。そのルールとはヤクトとオモロ人の現地語でいう所有者と採集者で利益を50%ずつ折半すること。もうひとつは、同じくチルというコーヒーの木の下草の刈り取りなどの自然への手入れ(日本で言う里山化のような感じを受けた。)である。

私は「高校生のためのアフリカ開発経済学テキスト」の中で、エチオピアの農業について、「アフリカの農業は、教科書で定説になっているようなプランテーションではない。」ことを書いている。なにより、主食となっている穀物生産が農業の中心であることを統計資料をもとに説いているのだが、はからずも、伊藤さんの講演はそれを裏付ける内容だった。この「森のコーヒー」、収穫量が不安定なのだ。あくまで、穀物生産が中心で、採集者にとっては現金を稼げるチャンスではあるものの、所有者と関係の深い人々以外は、毎回同じ森に行くわけではないらしい。サイドビジネスという感じなのだ。非常に面白かったのだが、レジュメが要旨のみだったので残念。いつか、公開講座でもやっていただければありがたいと思うのである。

最後にエチオピアのコーヒーを商う企業人である宇田川遼一さんのBOPビジネスの話があった。学術的なシンポジウムとは異質の話だったが、なかなか面白かった。その後、妻とひさしぶりに三条河原町で食事した。秋田の郷土料理。いやあ、充実した京都の午後だったわけだ。

2 件のコメント:

  1. こんにちは。
    常設ページにある「アフリカ開発経済学テキストv4.01」の画像が小さすぎて、読めません。たとえば "Googleサイト" を使ってHPを作成して、そこにPDFファイルを掲載して、このブログにリンクを張って頂くことは可能でしょうか?

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  2. MIYAさん、コメントありがつございます。昔は大きく出来たのですが、最近システムが変わったみたいですねえ。上記の提案、この連休に挑戦してみますね。

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