2011年2月26日土曜日

ザンビアの農村の話 続編

C村のダンボの画像
 昨日の島田先生の『現代アフリカ農村-変化を読む地域研究の試み-』を読んでの続編である。このC村を島田先生が調査対象に選ばれたのは、ダンボと呼ばれる湿地帯の農業利用と環境悪化につて調査を希望されていたからである。ダンボは、南アフリカに広く分布する低湿地帯で、雨季には中心部が冠水し、地下水位が他の土地より高いため、乾季に入っても草が枯れずに生い茂っている。島田先生がこのダンボに引かれたのは乾季に野菜栽培が可能な有用な土地であること、利用次第では容易に土壌侵食するような「脆弱な」環境であるという二点である。
 C村では、このダンボの周囲の土地(アップランド)でメイズ(トウモロコシ)を雨季に栽培し、乾季には、ここでトマトなどを栽培している。そういえば、アフリカのウガリ系の主食(2月5日付ブログ参照)には、トマトソースがよく使われる。

 メイズの価格も、94年に価格自由化されると、大きく変動した。IMFなのどの構造調整政策は、C村にも影響を与えているのである。収穫直後の4月から6月は供給が多いので価格が下がり、収穫前の1・2月は最高値になる。これに、地域格差が重なるらしい。同じ時期でも大消費地から離れれば離れるほど販売価格が低下する。商人が輸送費を差し引くからである。なるほど。
 トマトは、さらに変動が激しい。出来の善し悪しと鮮度が価格に直接影響するのである。収穫日と商人の買い付けのタイミングが上手く合えば高値で売れる。下手をすると投げ売りになってしまう。しかし、おそらく最近は携帯電話の普及で効率的になってきているとは私は思う。この辺、アフリカンモバイル、万歳である。

 ところで、1990年から2000年の統計で、世界で最も森林破壊面積が多いのは、ブラジルで、インドネシア、スーダンと続き、4位にザンビアが登場する。意外であるが、その謎解きが、この本には書かれている。昨日も述べたが、ザンビアの農業は、首都ルサカを中心に南北にのびる元白人入植地が農業の中心である。その周囲には森林保護区がもうけられてきた。さて、このザンビアの土地に関する規定は、エスニックグループの長と村長の許可による耕作が基本である。我々から見るとかなりゆるやかな規定だ。しかも村長と村人の人間臭い争いもある。気に入らない村人を追い出すという場合もあるらしい。昨日書いたように2代目の村長の急死で村を出る者もいる。古くから入植している者もいれば、新参者もいる。しかも彼らは多重婚であり、世帯はどんどん分化していく。結婚で新たな世帯を作る者もいるし、未亡人の家族も出るし、彼が生きていくためには、必要な耕作面積を確保しなければならない。そこで、森林保護区を開拓し、耕地を増やしていったのだ。昔は保護区を守る役人がいて、きびしく取り締まったらしいが、首長が保護区開拓の許可発言をしたという流言から、一気にそれが加速したらしい。島田先生は、C村内の人間関係まで調査しつつ、その過程を明らかにしていく。ダンボでのトマトなどの現金収入の差は、世帯の経済格差を生む。森林保護区での耕作は、市場への距離が生まれ、販売価格は低いが村内より広い耕地をもたらす。様々な各世帯の思惑がうごめいているわけで、なかなか興味深いのである。

 人間は生きていくために自然を破壊せざるを得ない。先進国にいて、大量に資源やエネルギーを無意識に消費している我々が、彼らの森林破壊を詰れるだろうか。私は、誰も乗っていないのに、いつも動いている地下鉄のエスカレータを見て、そんなことを考えている。

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