2010年12月27日月曜日

今年この1冊 2010

今年も「この1冊」を選びたい。いろいろ考え抜いたのだが、「援助じゃアフリカは発展しない」を挙げたい。とにかくタイトルが過激なので、インパクトが強い。「アフリカ学入門」「アフリカから学ぶ」の2冊も凄い本なのだが、どちらかというとテキストとして最良の2冊であって、インパクトという面では残念ながら及ばない。この「援助じゃアフリカは発展しない」については、9月15日付のブログで詳しく紹介した。あれから、少し時間が立つ。様々なアフリカの変化をもとに、今の私の考えを述べておきたい。それは、私が今年1年間アフリカについて考えてきたことの要約となると思う。

 ガバナンスが、アフリカ諸国に与える影響は極めて大きい。先日のコートジボアールの大統領選挙から起った紛争もそうだし、反対にルワンダのような成功例(8月12日付参照)もある。このガバナンスを良くする為に先進国は「援助」(私自身はこの言葉は嫌いだ。パートナーシップの観点から”国際協力”とすべきだと思う。)し、教育や保健医療、インフラなどを充実させるべく努力しているのだが、この「援助」が権力者にとっては、「レント」となり、デモクレイジー(権力者の持つ富を再分割して得票するしくみ)が跋扈するような状況が生まれている。結局、ガバナンスが悪化し、先進国の意図する方向には「援助」は流れないというわけだ。これにイラついたEUなのどは、アフリカ諸国に「援助」に対する透明化を求めている。(12月8日付ブログ参照)

 そこで、ダンヒサ・モヨ女史は、援助の停止を主張するわけだ。彼女の思惑は、さらに先進国の「援助」が公的な社会資本への投資でしかないことへの不満がある。アフリカが欲しているのは企業への投資である。アフリカ人のパワーを信じてほしいという訴えでもある。

 一方そういうアフリカの期待にそう形で直接投資をしているのが異形の中国なのである。中国とアフリカの関わりについては様々に論じてきた。私は決して全てが良いと思っているわけではない。反対に中国の覇権がアフリカに及ぶことを危惧する。(13億人の中国の異形さについては、理解を示すべきであると思っているが…。)また、ジンバブエのように、中国の投資がガバナンスの悪化を再生産している例もある。このあたり、ポールコリアーの次回作(1月28日付ブログ参照)を楽しみに待ちたいところだ。

 ダンヒサ・モヨ女史のこの著書が与えた一撃は大きい。援助=(国際協力)=善という概念を突き破ったといえる。安易な社会資本への開発資金援助ではなく、技術支援などを中心とした違う形での国際協力をさらに考慮すべきだと、先進国は考えただろうし、アフリカ諸国にとって権力者=デモクレイジーの時代への大きな警鐘となったのは間違いない。

 特に後者の意義をこめて、私の中での2010年の1冊としたい。

2 件のコメント:

  1. いつも拝見しています。成毛さんのブログの紹介からです。時間がたってこのサブジェクトにコメントすることをご容赦ください。

    これから日本国民として地球市民として生きていく上で、途上国支援のあり方、特にアジア、アフリカとの関わりは大変重要だと思っています。その意味で、小規模融資を通じた地域経済の発展と生活の向上のためにグラミン銀行方式の支援はとても重要かつ有効だと思っています。

    そこで、もしご存知でしたら余計ですが、KivaというNGOをチェックしてみてください。Kiva Japan(http://kivajapan.jp/)という日本の支援組織もあります。

    私自身、JICAの専門家としてフィリピンのODAに関与した経験がありますが、ODAでは決して乗り越えられものをグラミン銀行方式の小規模融資がになっていると実感しています。ですので、私も小規模融資に参加し、またKiva Japanの翻訳にも参加しています。

    高校の仲間でKivaの融資に参加している事例もあるそうですので、高校生のフィールドワークとしても良いのではないでしょうか。

    途上国支援に関わりたいと思っている一人としてコメントしました。

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  2. 野崎誠貴さん、コメントありがとうございました。
    kiva JapanのHP見ました。なかなかおもしろく有為な運動だと思いました。さっそく、次のブログで取りあげようと思います。もちろん、私も参加したいと思います。本校の生徒にも紹介したいと思います。

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