2010年8月25日水曜日

ボノと露大統領歓談記事に怒る

 毎日新聞の夕刊(大阪の第3版)を読んでいたら、南アの公務員大規模ストの下にこんな記事が載っていた。今日は、この件について、久々に渾身の怒りのブログを書きたいと思う。
新聞の記事をそのままここに書きうつすのも癪なので、同じ毎日新聞系列のWEBの毎日JPを引用したい。『ロシアのメドベージェフ大統領は24日、南部ソチの公邸でアイルランドの人気ロックバンド「U2」のボーカリスト、ボノさんと会い、好きなロック音楽やエイズ撲滅活動などについて歓談した。ロシア国営テレビによると、大統領はジーンズにネクタイなしの普段着姿で、ボノさんと屋外のテーブルでお茶を飲み、海辺を散策。好きなロックバンドについてボノさんが「わたしは『レッド・ツェッペリン』の長年のファンですが、あなたは『ディープ・パープル』のファンですよね。この対立を克服しないと」と冗談を言うと、大統領は「いや、レッド・ツェッペリンも好きですよ」と笑って答えた。』 だいたいここまでが毎日新聞の夕刊に載っていた分。

これだけだと、「そうか、メドベージェフは、ディープ・パープルが好きだったのか。一般・ピープルだな。」というような宮田珠巳風の感想になってしまう。自慢じゃないが、私はU2の音楽を聞いたことは無い。ボノ氏といえば、国際協力というか、開発経済学というか、そういう世界では最も熱心に活動している世界的芸能人の1人である。ジェフリー・サックスの「貧困の終焉」の単行本の帯に称賛の言葉を入れていたので、私は名前を知っているのだ。ロシアの大統領と歓談したのなら、何か言ってるはずだと、毎日JP(WEB)を見ると、さらに追加している記事がやっぱりあった。

『大統領は、ボノさんの音楽は「世代と世代を結び付ける」と述べ、貧困撲滅運動に取り組むボノさんを称賛。ボノさんは大統領に、エイズ撲滅への協力を要請した。ボノさんは25日のモスクワでのコンサートのため訪露した。(共同)』

実は、この最後の部分が大事なのではないか。ロシアの大統領が、『天国への階段』と『ハイウェイ・スター』のどちらが好きかなどという話題は面白いが、どうでもいい。スポーツ新聞的大衆迎合のゴシップ記事にすぎない。おそらく、ロイターから共同通信に流れ、配信した時点で毎日新聞の紙面の関係で、後ろの部分を割愛したと推測する。ここからは、さらに私の邪推だが、毎日新聞の編集部は、ボノ氏の国際協力に対するそういう側面を熟知していなかったのではないか。ボノ氏がロシアの大統領と会って、貧困撲滅のためにロシアも協力しろと言わないわけがない。後ろをカットしても、面白い記事で読者は喜ぶとでも思っているのだろうか。毎日新聞のこの記事、読者を馬鹿にしているといか言いようがない。さらに、産経のWEBのニュースも、わざわざ、レッドツェッペリンとディープパープルに、さらにリンクできるようにしている。馬鹿か!おまえら!と言いたいところだが、ここはおさえておきたい。http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100825/erp1008251026001-n1.htm

嗚呼。日本のマスメディアこそ、知の貧困である。せめて新聞くらいと思っていたのだが。新聞も紙面という物理的拘束の前には、簡単に文章を長短しうる生き物であることを再確認した次第。赤瀬川源平の『鏡の町皮膚の町 ー新聞をめぐる奇妙な話ー 』(筑摩書房 1976)を思いだした。
産経のWEBニュースにいたっては、ホント三流紙である。エイズの問題にこそ、リンクしてこそ、ジャーナリズムの良心ではないのか。 WEBのニュースは紙面の制限がない。だからこそゆるせない。

嗚呼。やってられへん!どこに真のジャーナリズムがあるのか!と言いたい。ところで、全く蛇足ながら私は、レッド・ツェッペリンより、ディープ・パープルが好きな一般・ピープルである。

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