2010年8月16日月曜日

8校合同仮想世界ゲームⅤ


 8校合同仮想世界ゲームの実施報告書(A4/20ページ)と、『“ESDのための仮想世界ゲーム(高校生版)”構想について ―ESDのベクトルを明確にすることで、高校生向けに再構築する試み-』という小論(A4/8ページ)を一応脱稿した。今日の画像は、その小論の核心部分である。<当然拡大できます。>
 私は、名古屋大学のH先生の作られた仮想世界ゲームの自由な構造がたまらなく好きである。そもそも社会心理学のデータを取る為のゲームであるから、様々な葛藤やジレンマを想定しているのは当然である。しかし、だからこそ非常にリアルな疑似体験が可能になる。私の本意は、こういう疑似体験を生徒にさせたいのである。しかしながら…。
 先日の国際理解教育学会で、いつもお世話になっているD女子大学のF先生から、ディスカッションの席でこういう指摘を受けた。ちょうど私の後にT大学の教授がリアルなコンピュータゲーム(パレスチナ問題を扱っている)を使った国際理解教育の実践報告を発表された。私の仮想世界ゲームと会わせ、このようなリアルな教材についての賛否両論の討論が進んだ後の話である。「この仮想世界ゲームは非常に自由度が高い故、ある種の危険性をもつのではないか。特に葛藤を生徒に過度に与えることは教材としては問題がないということはない。」…なるほど。たしかに、F先生の「ひょうたん島問題」という有名な国際理解教育の教材 には、このような葛藤は生まれないよう細心の工夫がなされている。
 結局、私は、授業形態の実施と集中講義形式の実施の経験を踏まえ、次のように結論付けたのである。高校生が、個人主体でこの仮想世界ゲームを行うことは難しい。(食料チケットの国際価格など、かなりの差があり、ゲームの安定性を欠いた。)親しい友人同士のグループ主体は、かなり葛藤が増幅されるので、8校合同のような初めて合うプレーヤーによるグループ主体が望ましい。できるかぎり、ゲームの進行とと共に生まれる葛藤を抑えるために、この仮想世界ゲームに、明確な目標とゴールを設定する。
 それは、先進国グループも、途上国グループも持続可能な開発を目指すという目標であり、先進国は単に富を蓄積するのではなく、仮想世界を経済成長させるとともに、途上国と共生できるようパートナーシップを発揮し、持続可能な開発に最も貢献したチームを勝ちとする。また途上国は、経済格差を乗り越え、先進国の協力をうまく得ながら開発を進め、1人あたりのGDPを増やし、途上国と同レベル1人100simのレベルまで上げることを大目標にする。この目標を達成すれば企業を設立できる。もちろん、最も開発された途上国が勝ちとなる。ここに、従来の仮想世界ゲームの環境問題も治安の問題も当然起こってくる。さらにルールが増え、難しくなったように思えるが、食料チケットの価格の目安(先進国10sim以上・途上国10sim未満)も予め決めたうえで、十分な事前学習を行い、経済成長をある程度保障しておいた上で行いたいと思っている。ならば、ゲームの目標が明確な分、グループで討議しながら進めやすいのではないかと考えている。
 かなり熟慮した内容なので、是非この新仮想世界ゲームを実施したいと考えている。またまた自分で高いハードルを作ってしまった。でもやってみたい。生徒諸君が何を得ることになるか、非常に楽しみである。

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