2010年7月29日木曜日

白雪姫コンプレックス考


 このところ、児童虐待のニュースが多い。ホント、日本はどうなるのか?教職にある者として若干の責任を感ずるのだが、主たる原因は学校教育ではなく、その多くは家庭教育の問題だといえる。「親」になる資格がないのではと思ってしまうような”コドモな親”の存在を知るたび、やるせない。
 浅田彰が昔々、「スキゾキッズの冒険」だったかで、「エディプスの三角形」の崩壊を予告していた。まさにそのとおりになった。「エディプスの三角形」とは、フロイドがギリシア神話のエディプス神話から導き出した「男の子は父親を憎み、母親と結婚したいという欲望をもっている。」というエディプス・コンプレックスをもとに、社会の在り方を伝授する父親と愛情で人とのコミニケーションを伝授する母親と子供の距離を三角形に見立てたものである。父親と母親と子供の距離で構成される三角形…これが歪だと教育的には問題がおこってくる。この話、有名なのだが、他の先生方はあまりご存じない。教師として必須の心理学的素養だと思うのだが…。とにかく、父親は母親化し、母親は子育てよりも大事なものをもつようになった。たとえば、運動会での父親のビデオ撮影。我が家には、小学校時代の運動会の息子を写したビデオや写真すらない。(当時、ビンボーだったこともあるが…。)父親はやさしければいい、というのもではない。また、電車などで化粧に時間をかけていることが明確な母親をよく見かける。幼児を連れていることが多い。
 「白雪姫コンプレックス」という心理学の本がある。この冒頭に小児科医の話が載っているのだが、夜間診療で、発熱で幼児を連れてくる母親像が変わったというのである。昔はとにかく慌てて駆けつけたという感じだった。下駄とサンダルを左右で履いていたり、服装も寝間着のままだったり…。ところが、最近は口紅をつけ、身なりが整っているのだと言う。発熱で泣き叫ぶ我が子を横に、口紅を塗る母親…。想像するだけで怖いではないか。
 この白雪姫コンプレックスとは、グリム童話の白雪姫から導き出されたものである。グリム童話は本当にあった話を童話化している。白雪姫は、魔女が毒りんごで姫を殺そうとする。実はこれは母が娘を殺した実話から来ている。つまり、児童虐待の話なのである。どうも、この虐待は母から子へ、そのまた子へと連鎖するらしい。深層心理に刻みつけられた白雪姫コンプレックスは、子が母(父)になった時、爆発する。
 嗚呼。こしてみると学校教育の出来ることは、知育・体育のみに絞られるのだろうか。ますます複雑化するストレス社会。学校カウンセラーの導入も図られているが、「人権」やら「社会的責任」やら「マスコミ」やら「官僚制」やら、様々なシバリが、我々教師を無力化していくように感じるのである。
 せめてもの試みに、私はこういう心理学を生徒に教えるようにしている。知っている方が知らないよりマシだろうという現場的発想である。

追記:今日のブログは書き込み通算200回目の記念すべきブログである。100回目は意識せずに通り過ぎてしまった。おそらく3月16日の「JEWYORKな話その1」ぐらいだと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿