2010年7月5日月曜日

国際理解教育学会にてⅡ


昨日の続編である。まず第1日目のシンポジウムの件である。「国際理解教育の理論と実践をつなぐ」という分科会に参加した。他に「学習領域をつなぐ」「学校と外部をつなぐ」といった分科会があったのだが、友人のM先生とY先生が記録報告の担当だったので、何も考えずこちらに参加した。要するに、昨日少しふれた大学(院)での研究と現場の教師の実践がどう繋がっていくのかというシンポだったわけだ。最初に日本大学の渡辺淳教授から発表があった。この先生、どこかで…と見ていたら、昔大阪国際交流センターで行われたアメリカを題材にした国際理解教育教材のセミナーの中心になられていた先生であった。私は、そういう過去の因縁もあり先生の話を面白く聞かせていただいたが、いかんせん長くなり、1時間という分科会のタイム・バランスが崩れてしまった。ワークショップ的に臨席の方と話すという趣向もわずか5分では…。都立K高校のN先生と少し話したのだが、もっと時間が欲しい。分科会内での討論も時間がなく、なんだか消化不良だった。とはいえ、この理論と実践をつなぐという国際理解教育学会の特色の”私なりの理解”は、私の発表時に活かせてもらった。

第2日目の発表の時、私は最初に「私は現場で実践している高校教師です。あまり難しい教育方法論はありません。研究者の先生方どうぞお手やらかに。」と関西弁でやってウケた。(笑)発表後の質疑応答でも「何故インターネットで知ったこの仮想世界ゲームを実践しようと思われたのですか?」と聞かれたので、「面白そうやし、ESDの教材として使えんとちゃうかと思ったんで…すみません、現場はこんなもんです。」と答えたら、ウケた。(笑)発表は、パワーポイントを使い、まあまあの出来だったと思う。わりと好評だった。

ところで、同じ「開発教育」のカテゴリーで発表した先生方の感想をちょっと述べたい。まず広島大学大学院出身のY市立中学校の先生は、国際理解教育の様々な方法論の中であまり検討がなされていない、外部招へいについて、具体的にはJICAの出前授業について発表された。ご本人もアフリカでJOCV経験者である。素晴らしく緻密な教育学的な方法論から導かれた結論だった。広島大学関係の先生方はいつも緻密だという印象を受ける。だが、申し訳ないがそれだけである。結論は私の経験知から生まれる直感と全く同じだった。まあ、教育学の研究というのはそういうものなんだろうなあと思った。(研究者の皆さん、スミマセン)
私の次にJ教育大学の若い院生君が、エンパワーメントについて発表した。私はかなり期待していたのだが正直、中身がない。私は初めて質疑応答で手を挙げた。「フィールドワークに行きましたか?」否という回答にガッカリした。私は、「途上国の現状を見ずして、途上国を語るなかれ。私はブルキナで経験した彼らのことを整然とした理論として語ることはできない。涙でしか表現できない。」と攻撃してしまった。長野県のH先生という小学校の先生が、さらに続けて批判した。H先生はJICA教員研修でマラウイに行ったという。ストリート・チルドレンの学習のため、小学生に実際に路上で寝ること、食べることを体験させたというすごい人だ。実践が理論を完全に凌駕したのである。
さらに、拓殖大学のI教授が、パレスチナ紛争のシリアスゲーム(かなり現実に近いPCゲーム)を教材として大学で参加型学習を行ったことを報告した。凄いインパクトである。賛否両論の質疑応答となった。
最後に、”意欲と学力の低い”高校生に対する開発教育ワークショップと題して、K県立高校のO先生が発表された。このタイトルに、ある定時制高校の先生がガブっとかみついた。これも賛否両論。凄い質疑応答の嵐である。
司会をされていたF先生が、他の分科会では6人発表のところもあり、若干時間もあるので討論会を提案された。いやあ、なかなか白熱した論議となったのである。H先生はは、シリアスゲームの存在自体を否定された。これを擁護する院生も登場、激論になった。司会のF先生は、私の仮説世界ゲームもシリアスゲームもかなりの危険性をもっていることを指摘された。私もこれには納得した。でも現場と理論のぶつかり合い、面白かったなあ。ちなみにJ教育大学の若い院生君は、熱心に討論をメモし、次に備えていた。良い顔をしていたのである。私は名刺を渡し、いつでも実践記録とか送りますよ、力になりますよと激励した。すると担当教授がそばに居られ会釈を受けた。恐縮した。若いのだから、失敗をおそれず頑張って欲しい。

と、いうわけで非常に意義深い学会の2日間だったのである。<今日の画像は”広尾”の街角の写真。曇っていてわかりにくいが、夜にはこの道の向うに脇役化している東京タワーが見える。>

4 件のコメント:

  1. 本当に久々のコメントで申し訳ないほどです。
    最近、21歳にして過労を経験しましたwこれは完全にネタですw
    私の研究テーマは基本所得と労働なので、それこそフィールドワークであり、経験知です。ただ、仕事ばかりしていると世界が狭くなるので今日はブログをまとめ読みさせてもらって考えごとをするネタ探しをさせてもらってます。

    早速エゴグラムを試させてもらいましたが、理想が人よりちょっと高い以外はごく一般的だとか、エキスパートにはなれないといったヒドイ言われようでしたので、信じないことにします。

    話は今エントリに戻って、何より学会は羨ましいです。そういう議論ができる職場ではないので、どこかに寄せてもらいです。果物屋兼政治学者が夢だったのに最近はなぜか果物屋の時間が9割を占めております。7月7日は我が大学にハーバード大学の講師であるスティーブン・ワイズが来るので楽しみです。

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  2.  哲平さん、久しぶりです。過労…若いうちにはそういった無理をして自分の肉体的限界を確認しておくことが重要だと思います。血糖値の高い半病人の私も、昔は3日くらい徹夜OKだったのですが…。(笑)今は私の肉体的限界もかなりハードルが下がりました。今日もクタクタです。明日は試験監督がないので、振替休日を使います。(とはいえ家で仕事します。)
     エゴグラム、CPとAが高かったのかな。またブログで触れたいと思います。
     学校でも、個々の生徒や学校経営についての気のあった仲間うちでの議論はありますが、学会のような利害のからまない議論はないですね。ステイーブン・ワイズ氏は動物保護関連の方のようですが、例のイルカ漁の映画の話がでるのでしょうか。

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  3.  哲平さん、久しぶりのコメントありがとうございます。
     過労…若い時に自分の肉体的限界を知ることは重要です。私も昔は、徹夜を3日くらいならOKでしたが、今や見事に老いました。(笑)
     エゴグラム、CPとAが高いのかな。またブログに書きますね。私のエゴグラムの授業は、分析の方法まで生徒に教えます。
     職場でも個々の生徒や学校運営の問題では、気のあった先生とは議論しますが、どうしても立場とか利害がからみます。その点、学会は確かにいいですね。触発も受けますし…。でも現場でこのような何らかの学会に入っている教員は少数派です。
     スティーブン氏のことを調べました。動物の保護をやっている人みたいですね。イルカ漁の話がでるのでしょうか。
     

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  4. 哲平さん、コメントありがとうございます。
    若いうちに自分の肉体の限界をしることは重要です。昔は私も3日くらい徹夜しても平気でした。今は悲惨ですが…。
    エゴグラムはCPとAが高いのかなと思います。またブログに書きますね。またスティーブン氏のこと調べました。動物愛護の専門家とか。イルカの映画の話になるのでしょうかねえ。

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