2021年8月8日日曜日

秘伝 教材研究(世界史編)Ⅶ

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WW1は「総力戦」になった。傭兵から国民皆兵となり兵士の補充は容易で、しかも生産性が上がったので武器生産の補充も容易で被害を拡大させた。戦費は国債で賄いうようになったので、そう簡単に終わらなかった。塹壕戦といった酷い消耗戦になる。

結局、ドイツ革命がWW1を終わらせた。ドイツ軍人からすれば、ボクシングでまだ戦えるのにタオルを投げられたようなものだ。しかもドイツ国内は戦場になっていない。この後、ケインズが席を立ったといわれるほど過酷なベルサイユ条約が結ばれる。天文学的な数字の賠償金、海外領土のはく奪、軍備の縮小、フランスへの領土割譲…。

この賠償金は、特にイギリスのアメリカへの負債額と関係している。史上初の総力戦は莫大な経済的効果(?)を生んだわけだ。国是のモンロー主義を破ってのアメリカの参戦も負債にならぬように保険を掛けたものだ。ドイツでは、ルール工業地帯の差し押さえ措置で、ヤケッパチになり紙幣増刷を行いハイパーインフレに突入する。

この混乱した状況下で、ナチが台頭する。ドイツ革命の参加者にはユダヤ人が多い。(そもそもマルクスはユダヤ系である)ハイパーインフレを招いた金融界を握っているのもユダヤ系が多い。この論理で、ベルサイユ条約破棄、ユダヤ人排斥に動き出す。SAという私設の暴力装置も、うまいプロパガンダも効果的に働き、ミュンヘンカンプ以後、議会選挙で得票を伸ばした。とはいっても3割が限界で、共産党を攻撃しながら、財界や中間層を味方につけていく。

おりしもデノミ政策とアメリカの投資でドイツ経済は持ち直していたが、1929年の世界大恐慌でドイツ経済もどん底に落ち込む。これをナチは意外に旨く乗り切る。ケインズの有効需要理論をもとに、アウトバーンの工事、さらに軍需へと拡大していったのだ。(最も早くこの大恐慌を乗り越えたのは高橋是清で、それまで反対だった軍需を推進し有効需要を創出した。)やがて、ナチは当時最も民主的とされたワイマール憲法を蹂躙する。三権分立を破壊した時限立法:全権委任法である。行政に憲法以上の権力を集めることに成功した。ヒトラー政権化の独裁の完成である。

「民主主義を無制限に信用してはならない。ナチが得た得票は3割だが、独裁体制を築いた」とは、アウシュビッツを案内してくれた日本人ガイド中谷氏の言である。

過去から教訓を得る事が歴史を学ぶ意味であるならば、この民主主義への疑念が第一ではないかと私などは考えている。

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