2014年7月19日土曜日

日経 トゥキュディアスの戦争論

Thukydides
第一次世界大戦から100年ということで、このところ、大戦について活発な論議がされている。昨日の日経に、防衛研究所の石津朋之氏の第一次世界大戦の教訓(下)という小論が載っていた。この中で、古代ギリシアのトゥキュディアスが定義した、戦争の原因の「利益、恐怖、名誉」という三要素が出てくる。第一次大戦では、イギリスがオランダ・ベルギーでの国益を守ろうとしたのが「利益」にあたり、ドイツの東欧でのロシアの覇権拡大を危惧したという「恐怖」、イギリスのドイツの勢力拡大という「恐怖」、さらには、イギリスがベルギーとの安全保障条約を遵守しようとした「名誉」などが、挙げられていた。古代ギリシアから、人間のやることなど十分認識されていたわけだ。

さしずめ、現パレスチナのガザの紛争は「恐怖」が主因であろうし、中国の東・南シナ海での行動は「利益」が見え隠れする。ところで、昨日マレーシア航空機の撃墜で世界的に注目されているウクライナの親ロシア派とウクライナの内戦はどうで見るべきであろうか。

同じ日経に、「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫著/集英社新書)の広告が載っていて、内田樹氏や佐藤優氏のコメントも購入するに十分の期待感を抱かせた。さっそく購入して読み始めた。水野氏はベトナム戦争以後、アメリカは軍事力を使って市場を拡大するすることが難しくなったと書いている。ベトナム戦争は帝国主義的な、地理的物的空間的市場獲得の分水嶺になった、というわけだ。これ以後アメリカは、IT金融市場空間をつくり新しい市場を獲得していくことになった、というのである。詳細はまた、読後にということで、話を戻したい。

ロシアは、ウクライナ東部をどう考えているのか。すでに先進国は、戦争の愚、特に経済的な影響をを十二分に学んでいる。地理的空間的市場拡大を得るという「利益」を求める戦争は、前述の新書の内容からも、完全に過去のものだといえる。
「恐怖」から、EUとの緩衝地帯を求めているのならば、これも時代錯誤の認識である。軍事技術、特に航空戦力は緩衝地帯をはるかに越えて有効である。

ならば民族的「名誉」であろうか。だが、今回のマレーシア航空機撃墜で、その民族的な名誉は地に堕ちたと思わざるを得ない。ロシア民族の評価が堕ちることが、決していい事だとは思わないが、少なくとも全地球的にロシア武装勢力は完全にヒール(悪役)に堕ちたと思われる。イスラム武装勢力もヒール扱いされているが、少なくともまだ(欧米的価値観に反対する)イスラムの正義を信じる他地域の味方が存在する。しかしロシア武装勢力は違う。彼らの唯一の味方・本家のロシアがヒールとされてしまうと、世界から完全に孤立する。プーチン大統領のコメントを聞いていると、そこまでの覚悟はなさそうだ。

…トゥキュディアスの三原則をもとに考察すると、こんな具合だろうか。

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